著作権の1つとして、ゲームソフトがあります。そして、中古のゲームソフトの販売について著作権が及ぶのかという問題がありました。すなわち、そのゲームソフトの著作権者が、新品のゲームソフトの販売について著作権を有しているのは当然として、その中古品を販売する業者に対して販売の差し止め等ができるか否かについて争いがあったのです。
これについては各裁判所(下級審)における判断がまちまちでしたが、最近、最高裁において最終的判断がされ、その判断が1つに落ち着きました。各裁判所における判断がまちまちだったということは、それだけこの問題が微妙で、判断が困難なものだったといえます。
主な論点は、次の2つです。
論点1. ゲームソフトが「映画の著作物」に当たるか?
論点2. 映画の頒布権は消尽するか?
特許権等の産業財産権や映画以外の著作物については一旦適法に販売されたものについては権利が及ばない(権利が消尽する)とされていますが、映画については特殊な事情があるのです。
最高裁は、論点1については「当たる」、論点2については「消尽する」と判断し、中古ゲームソフトに著作権は及ばないと判断しました。
論点1の「ゲームソフトが映画の著作物に当たる」というのは意外が感じもしますが、著作権法では、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物」も映画の著作物に含まれるとされており(2条3項)、そのように判断されました。
論点2については次のとおりです。映画の著作物については、これまで、中古の映画にも著作権は及ぶ(頒布権は消尽しない)とされてきました。そして、ゲームソフトも映画であるならば、同様に扱われるべきという判断もそれまでの下級審にはありました。しかしながら、映画の著作物について頒布権が消尽しないとされてきたのは、劇場用映画の配給制度という特殊な実状を考慮してのことであり、ゲームソフトにはそのような特殊な事情がないため、最高裁は、本来の原則どおり、ゲームソフトについては頒布権は消尽すると判断したのです。
この最高裁判決によって、中古ゲームソフト販売業者は、そのゲームソフトの著作権者による制約を受けずに販売することができることとなりました。
弁理士 長谷川 哲哉