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新聞掲載記事

更新:2006/01/05

シリーズ「日本知的財産仲裁センター」第2回~センターにおける調停~

 前回は当センター全体の説明をしましたが、今回は、当センターの主力業務である、センターでの「調停」について、Q&A形式で説明します。


Q1「調停」、「仲裁」とかいうのは、誰か中に入ってもらって解決するということで、同じようなものでしょう?

A1大雑把にはそうですが、実は重要な違いがあります。「仲裁」というのは、仲裁法にも規定がありますが、第三者に判断を任せて、その判断なら従うということを双方で約束してその約束に基づいて行われます。ですから予めそういう文書での約束がないと仲裁にはなりませんし、反対に、約束した場合には、その第三者の判断には従わなければなりません。いわゆるケンカの仲裁とは少し意味が違います。
 これに対し、「調停」とは、調停人が中に入って双方の話がまとまるようにお手伝いするということで、まとまればそこで「和解」で解決ということになります。調停人の方針なり調停案に応じられないというのであれば、調停不成立ということで、交渉決裂のままで終わります。


Q2裁判なら新聞やテレビで報道され、教科書、参考書もたくさんでているようなので、何となく分かりますが、「調停」というと、一体どうなるのか分からないので不安だと言う声を聞きますが、本当のところはどうなんでしょう?

A2実は、そういう話を時折耳にしますが、むしろ不安という点では逆じゃないのかなと我々は考えています。
 というのは、調停手続は、大雑把には裁判に似た進行になりますが、手続自体も双方話し合いの中で進みますから、融通が利くという面ではむしろ教科書どおりではないという面はあります。しかしそれで不安かというとそうではありません。話し合いの中で次は○○しましょうということで、事案に応じて双方納得の上で手続を進めますから心配は不要です。
 むしろ裁判の場合、裁判所が、当事者が予想していたこととは別の考え方をとっていた場合など、突然予想外の訴訟指揮を受けることがあります。
 もし調停の場合であれば、調停人から当事者の予想もしない提案をしてきた場合、それを拒否して調停を不成立に終わらせることも可能であるのに対し、裁判の場合、予想しない不利益な方向に裁判が進んでも、そこで「ヤメタ」という訳にはいきません。
 特に最近の知財裁判は、法改正が多いということもあって、一昔に比べ、裁判進行や判決内容もダイナミックに変化しており、専門家でも「読みにくい」状況があります。

Q3「調停」が手続の進行も話し合いで進めることは分かりましたが、通常の場合ですと、実際にはどのように進むのでしょうか?

A3まず申立人から申立書が提出され、申立手数料(通常5万円です)が納付されますと、センターでは被申立人に申立書を送付して調停のテーブルにつくかどうかを問い合わせます(申立書の書式は、http://www.jp-adr.gr.jpで入手できます)。
 テーブルにつくことになれば、第1回目の調停期日を決めて、その旨双方に連絡します。もし被申立人がどうしても調停はいやだと言うことで拒絶されれば、残念ながら調停はうち切られ、その場合は手数料のうち3万円はお返しします。

 無事調停が始まれば、被申立人は申立に対する答弁書を提出し、調停人は第1回期日に侵害問題や事件解決についての意見を当事者双方と交換します。
 そして、問題点について資料の追加の必要性等が議論されます。
 簡単な事件ですと、そこである程度侵害の可能性が高い事案か低い事案かを考慮して、事件解決の方向についての議論に進むこともあります。
 第2回期日には追加された資料に基づいて、調停人が解決方向についての意見調整を図ります。
 順調に行けば、第3回目の期日には、和解条項についての検討に入ります。

Q4申立人は最大限の要求をして、被申立人は1円も出せないといって平行線で終わるということはありませんか?調停人はどうやって解決案を調整するのですか?

A4前回説明したように、センターの調停は知財事件に経験豊富な弁護士、弁理士のペアで調停を進めます。ですから、調停人がそう判断した理由を説明して、こういう訳で侵害の可能性が高いから、ある程度は出しなさいとか、侵害の可能性は低いから、あまり強く要求できませんよといって説得すれば、かなりの割合で応じてくれるようです。
 というのは、それで解決できなければ、裁判になる可能性がありますが、裁判で高い費用や面倒な手続きをとっても、自分に有利な判決がでる可能性は低いということで、納得されることになると思います。中には、理由を説明しても納得いただけず、それなら裁判だといって頑張られる?方もありますが・・・

Q5そうすると調停でまとまるとするとどの程度の期間が必要ですか?

A5通常、2回程度の期日でおおよその解決方針が決まり、あと1回か2回の期日で具体的な和解条項が決まります、ですからだいたい3~4ヶ月で解決が得られます。

Q6なるほど裁判よりは早そうですね、ところで費用としてはどのぐらいかかるのでしょうか?

A6先ほどの申立手数料を別とすると、期日手数料として、1回につき当事者それぞれ5万円で、和解が成立して和解契約書を作成になると、当事者各15万円です。なお、これらの手数料については、当事者の一方が個人や小企業であってこれらの費用負担が困難であるという事情があれば、約半額程度に軽減する制度もありますので、その場合は当センター(三の丸分室 052-203-1651 伏見分室 052-211-2051)にお問い合わせ下さい。

○次回は最近利用の増えているセンターの判定について説明します。

 

日本知的財産仲裁センター名古屋支部
運営委員長 弁護士・弁理士 内藤 義三