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新聞掲載記事

更新:2020/09/30

特許ってどんな制度?~保護対象は“発明”~

1.特許制度の概要
  特許とは、「発明」を保護する制度です。特許制度は、発明をした者に対して国が一定期間その技術を独占実施
 できる権利(特許権)を与えて発明を保護・奨励するとともに、発明の内容を公開して発明の利用を促進し、産業
 の発達に寄与することを目的としています。
  発明が特許としての保護を受けるためには、まず、発明の内容を記載した書類を特許庁に提出して特許出願をす
 る必要があります。その後、特許庁で、出願された発明が特許となるための要件(特許要件)を満たしているのか
 を審査し、特許要件を満たしていると判断されると、特許査定がされます。なお、特許出願を行うと、特許査定が
 されるか否かに関わらず、原則として1年6か月後にはその発明の内容が世に公開されます。
  特許査定がされ、所定の特許料を納付すると、出願した発明についての特許権が発生します。特許権者は、特許
 発明を自ら実施する権利を専有することができます。
  特許権は、原則として出願の日から20年間存続します。期間満了後は、特許権が消滅し、誰もがその発明を自由
 に利用できるようになります。

2.保護対象は「発明」
(1)発明とは
  上記の通り、特許法の保護対象は「発明」です。特許法では、発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作の
 うち高度なもの」と定義されています。順番に解説します。
 <自然法則の利用>
  「自然法則」とは、自然界において経験的に見出される科学的な法則を言います。従って、計算方法やゲームの
 ルールのような人為的な取り決めや、永久機関のように自然法則に反するものは発明には該当しません。また、万
 有引力の法則のような自然法則そのものも、自然法則を利用していないため、単なる発見であって発明には該当し
 ません。
 <技術的思想>
  「技術」とは、一定の目的を達成するための具体的手段です。実際に利用でき、知識として伝達できるものをい
 い、個人の熟練によって得られる技能とは異なります。従って、フォークボールの投球方法のような技能や、絵画
 ・彫刻などの美的創作物などは発明には該当しません。
  一方、絵画・彫刻などの美的創作物(著作物)は、著作権法の保護対象となります。創作物が物品の外観に係る
 工業デザインであれば意匠法の保護対象となります。商品・サービスに使用する商品名、サービス名、ロゴマーク
 などであれば、商標法の保護対象となります。
 <創作>
  「創作」とは、新しいことを創り出すことをいい、単なる「発見」とは区別されます。従って、天然物の単なる
 発見などは「発明」には該当しません。
 <高度>
  発明は、自然法則を利用した技術的創作であっても「高度」でなければなりません。ここで言う「高度」は、従
 来にない新しい機能や優れた効果を発揮できる程度でよく、改良品でも立派な特許になります。
  一方、実用新案登録の対象である「考案」は、高度でなくてもよいとされています。
(2)発明の種類
  また、発明は、「物の発明」と「方法の発明」に分類され、カテゴリごとに特許権の効力が及ぶ「実施」行為の
 内容に差があります。
  「物の発明」は、発明が物品に具現化されたものであり、経時的要素を含みません。特許法では、プログラムの
 発明も物の発明に含まれます。物の発明では、その物の生産、使用、譲渡等の各行為が「実施」に該当します。
 「方法の発明」は、発明の内容に経時的要素(順序、時間など)を含みます。方法の発明では、その方法を使用す
 る行為が「実施」に該当します。
  一方、実用新案登録は、方法に係るものを対象としていません。
  なお、よく話題になるビジネスモデル(ビジネス方法)特許は、コンピュータ等のハードウェアに絡めて実現さ
 れる等の一定の条件を満たす場合に、発明として扱われます。
                                            弁理士 森 徳久