東海会の活動について

新聞掲載記事

更新:2020/07/31

買った特許が使えなかった~特許を買うときは事前に弁理士に確認を!~

  昔、勤務弁護士時代の元ボスから相談を受けた。「依頼人は発電機に関する特許権者で、この特許を3千万円で
 相手の会社に売った。しかし何年たっても依頼人が試作品を作れなかったため、買い手の会社が契約を解除して3
 千万円の損害賠償を請求してきた。何か反論のネタは無いか。」というのである。売り込み文句として、「この発
 電機を100ワットの電源に差し込めば120ワットの電気が起こせる。」と依頼人が説明し、買い手の技術顧問が
 「理論上はあり得る。」と言ったため相手は購入を決めたらしい。特許公報を見ると、「従来の発電機よりも格段
 に発電効率の良い発電機」とある。しかし図を見る限り、素人の私が見てもとても作動するとは思えない。それで
 元ボスには、「当方の反論は、過失相殺のみ。良く調べもせずに買った側にも過失がある。」と説明したら、「そ
 の主張はできない。実質的な依頼人はこの権利の新たな買受人なんだ。」と言われた。
  特許査定が下りていればこの技術は直ぐに商売になる、そう誤解している人は結構いるようである。そのおこぼ
 れを頂戴している我々弁護士が文句を言う筋合いではないのだが。
                                       弁護士・弁理士 後藤 昌弘