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新聞掲載記事

更新:2004/01/21

弁理士の増員

 弁理士は、主として、特許、実用新案、意匠、商標等の産業財産権の代理人として認定されている資格であり、創設から約100年が経過している。そして、この弁理士は、「業として代理できる」ためには、日本弁理士会の会員でなければならず、現在約5000名が登録している。
 この度、特許庁は「IT戦略」として、弁理士の数を約10000人にすべく、毎年、弁理士試験の合格者を約500名である。その予定通りであるなら、今後、約10年の間、弁理士増加の特需があることになるが、巷では、このように増員をすると、特許庁審査官が退職したときの受け皿がなくなり、いかがしたものかとも聞き及んでいる。
 このように、弁理士の数を増加することが、よいか否かは、クライアントの判断を待つことになるが、実は、過去において、似たような事案に遭遇したことを思い出したので、ここに記載したい。
 約25年前、当方が某社に入社した後、約6月が経過した時の話しであり、我社も時代に乗り遅れることなく、コンピュータを導入し、合理的な技術開発を目指すというものである。尚、その某社は、既に経理計算を導入していると共に、一つの生産ラインにはコンピュータ制御(多くの用途はデータロギング)としてコンピュータを導入していた。
 前記技術開発のためにコンピュータを導入するに当たって、その会社が実施したコンピュータ講習会は「プログラミング」の収得であったが、当方、新人ながら、研究員や設計者に、「プログラミング」の収得が必要か否か、疑問に思いつつ、講習会の手助けをしたのである。
 この会社の担当者は、「プログラミング」ができる社員が増加すれば、コンピュータの使用頻度が上がり、導入した価値があると言うものであり、事実、講習会が終了後、約6月までは使用頻度の増加があったが、その後は減少したと記憶している。
 しかし、コンピュータの利用を図るために必要なことは、何がコンピュータでできるのか、又、コンピュータを使用するに当たって仕事のあり方、データ収集の方法等を教えるべきであると思うが。
 今回、特許庁が「IT戦略」と銘打って弁理士を増加させる予定であるが、弁理士を増加させると、すばらしい発明が多く出現するとでも言いたいのか、何か、目的に対する手段が異なっているように感ずるのは当方だけか。この点について、審査官と話し合う機会があったが、審査官も「発明」を如何にしてもらうのかが重要であるという認識であり安堵した。しかし、発明することの面白さを、小学生や中学生に講演等をするには、文部省の許可が必要とのことで、言われてみると当たり前のことではあるが、いやはや、官僚はと思いつつ、何か割り切れぬ気持ちである。

弁理士 犬飼 達彦