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新聞掲載記事

更新:2005/05/29

実用新案登録出願の活用を

 実用新案登録出願は、実体的要件について審査されずに登録され、実体的要件について審査を行う特許出願と比べて早期に権利取得できる(平均4月程度)。そのため、実用新案登録制度はライフサイクルの短い技術を適切に保護できる点で特許制度と別の意義を有するとされてきた。
 しかし、近年、実用新案登録出願の出願件数が激減する一方、特許出願の出願件数が漸増しており、実用新案登録制度がうまく活用されず、特許出願の審査遅延を招く問題が指摘されている。この理由として、実用新案登録出願後から実用新案登録されるまでの短期間に事業目的や技術動向の変化を見極めるのが実質的に難しく、長期間安定した権利で保護される特許出願が選択されやすいことが挙げられる。このような事情に鑑みて、平成16年一部改正では大きく以下の点が改善された。

(1)従来、実用新案登録前だけ実用新案登録出願を特許出願に変更できたが、改正後は、原則として実用新案登録出願から3年以内であれば、実用新案登録に基づいて特許出願できるようになった。これにより、出願人は、事業目的や技術動向等を見て特許出願と実用新案登録出願を適宜選択することが可能になった。
 即ち、例えば、技術開発の成果物が模倣容易であれば、実用新案登録出願をして早期に権利取得し、その後の事業戦略の中で当該技術の重要性が増した場合には、実用新案登録に基づく特許出願をし、特許権を取得することが可能になった(但し、この場合には実用新案権を放棄する必要がある)。

(2)実用新案権の存続期間が「出願日から6年」から「出願日から10年」に延長された。これにより、実用新案権の存続期間と特許権の存続期間(出願日から20年)との差が小さくなり、実用新案権に基づく差止請求や損害賠償請求を利用する機会が増えた。

(3)実用新案権の登録料が引き下げられた。これにより、実用新案権の取得維持にかかるコストが従来より一層安くなり、例えば、特許出願後、権利活用の可能性が低下したが権利は取得したい場合には、特許出願を実用新案登録出願に変更し、低コストで権利取得・維持することが可能になった。
 従って、今後は、実用新案登録出願が技術動向や事業内容・予算などに合わせて適宜選択され、実用新案登録制度がより有効に機能することが期待される。

弁理士 村瀬 晃代