特許協力条約(PCT)に基づく国際出願によれば、ひとつの出願によって、PCT加盟国の全ての国に同時に出願
したとみなされます。PCT加盟国は、2018年8月現在で、152ヶ国となっています。
特定の国で特許を取得しようとする場合、その国に対して直接特許出願を行ってその国における審査手続きを経
る必要がありますが、特許を取得したい全ての国に対して個々に特許出願を行うことは困難である場合があります。
具体的には、特許を取得したい国のそれぞれに対して、その国で定められた言語で作成された特許出願書類を用意
して特許出願を行うことは、大きな負担となり得ます。
この点、PCTに基づく国際出願によれば、受理官庁(例えば、自国の特許庁)に対して特許出願の手続きをひと
つ行うだけで、PCT加盟国の全ての国に同時に出願したことと同じ効果を得られます。PCTに基づく国際出願の日
が、それぞれの国への出願日とみなされます。
国際出願の件数は年々増加傾向にあり、1978年に条約が発効してから、26年目の2004年には世界で累計100万
件を越えました。さらにその12年後の2016年には世界で累計300万件を越えました。2017年中の世界での国際出
願の件数は、推計で233,000件となっています。なお、2017年中の日本における国際出願の件数(日本特許庁を
受理官庁とする国際出願の件数)は、推計で約44,500件です。
国際出願については、先行技術があるか否かについての国際調査が国際調査機関により行われ、出願された発明
が、新規性、進歩性、産業上の利用可能性を有するか否かの見解が示されます。この見解は、法的拘束力を有する
ものではなく、特許するか否かは最終的には各国の審査に委ねられますが、出願人にとっては非常に参考になりま
す。肯定的な見解が示された場合には、各国の国内移行手続(※後ろでも説明しています)に進む価値があると考
えることができるでしょう。否定的な見解が示された場合でも、PCT第19条に基づく補正、並びに、予備審査請求
及びPCT第34条に基づく補正を行うことで、否定的な見解が覆り肯定的な見解が出されるに至ることもあります。
PCTに基づく国際出願を行った後、特許を取得したい国に対しては、その国際出願を特許を取得したい国の国内
手続きに係属させるための手続きを行います。この手続きを国内移行手続と言います。この国内移行手続は、国際
出願日(国際出願が優先日を伴う場合には優先日)から30月(一部の国については31月)以内であれば、いつで
も行うことができます。国内移行手続では、移行先の国において規定されている言語による翻訳文を提出すること
が求められます。
PCTに基づく国際出願によれば、実際に各国に出願するか否か(国内移行手続を行うか否か)について、優先日
から30月という猶予ができます。各国への直接出願の場合は、優先権を伴う場合には優先日から1年以内に出願す
ることが求められますので、PCTに基づく国際出願では直接出願と比較すると時間的に余裕ができることになりま
す。また、PCTに基づく国際出願では、国際調査の結果を参考にして国内移行手続の是非の検討をすることができ
る点でも、メリットがあると言えます。
弁理士 岩田 誠
したとみなされます。PCT加盟国は、2018年8月現在で、152ヶ国となっています。
特定の国で特許を取得しようとする場合、その国に対して直接特許出願を行ってその国における審査手続きを経
る必要がありますが、特許を取得したい全ての国に対して個々に特許出願を行うことは困難である場合があります。
具体的には、特許を取得したい国のそれぞれに対して、その国で定められた言語で作成された特許出願書類を用意
して特許出願を行うことは、大きな負担となり得ます。
この点、PCTに基づく国際出願によれば、受理官庁(例えば、自国の特許庁)に対して特許出願の手続きをひと
つ行うだけで、PCT加盟国の全ての国に同時に出願したことと同じ効果を得られます。PCTに基づく国際出願の日
が、それぞれの国への出願日とみなされます。
国際出願の件数は年々増加傾向にあり、1978年に条約が発効してから、26年目の2004年には世界で累計100万
件を越えました。さらにその12年後の2016年には世界で累計300万件を越えました。2017年中の世界での国際出
願の件数は、推計で233,000件となっています。なお、2017年中の日本における国際出願の件数(日本特許庁を
受理官庁とする国際出願の件数)は、推計で約44,500件です。
国際出願については、先行技術があるか否かについての国際調査が国際調査機関により行われ、出願された発明
が、新規性、進歩性、産業上の利用可能性を有するか否かの見解が示されます。この見解は、法的拘束力を有する
ものではなく、特許するか否かは最終的には各国の審査に委ねられますが、出願人にとっては非常に参考になりま
す。肯定的な見解が示された場合には、各国の国内移行手続(※後ろでも説明しています)に進む価値があると考
えることができるでしょう。否定的な見解が示された場合でも、PCT第19条に基づく補正、並びに、予備審査請求
及びPCT第34条に基づく補正を行うことで、否定的な見解が覆り肯定的な見解が出されるに至ることもあります。
PCTに基づく国際出願を行った後、特許を取得したい国に対しては、その国際出願を特許を取得したい国の国内
手続きに係属させるための手続きを行います。この手続きを国内移行手続と言います。この国内移行手続は、国際
出願日(国際出願が優先日を伴う場合には優先日)から30月(一部の国については31月)以内であれば、いつで
も行うことができます。国内移行手続では、移行先の国において規定されている言語による翻訳文を提出すること
が求められます。
PCTに基づく国際出願によれば、実際に各国に出願するか否か(国内移行手続を行うか否か)について、優先日
から30月という猶予ができます。各国への直接出願の場合は、優先権を伴う場合には優先日から1年以内に出願す
ることが求められますので、PCTに基づく国際出願では直接出願と比較すると時間的に余裕ができることになりま
す。また、PCTに基づく国際出願では、国際調査の結果を参考にして国内移行手続の是非の検討をすることができ
る点でも、メリットがあると言えます。
弁理士 岩田 誠