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新聞掲載記事

更新:2005/03/29

著作権法の改正

 著作権法の一部が改正され、2005年1月1日に施行されました。今回の法改正の主な内容は、1.国外頒布目的商業用レコード(日本販売禁止レコード)の還流防止措置、2.書籍・雑誌の貸与を貸与権の対象としないとする経過措置の廃止、3.著作権等侵害についての罰則の強化、の3点です。この中で1及び2について、Q&A形式で概要を紹介します。

Q1 どのような音楽レコードが輸入規制を受けることになりますか?
A1 近年、日本の音楽産業は、特にアジア諸国を中心に海外への進出・展開を図っています。海外では通常、日本国内での販売価格より遙かに低価格で音楽レコードが販売されています。このように海外で安価で販売された真正な音楽レコードが日本国内に逆輸入されれば(環流すれば)、国内レコードの売上げに多大な影響を及ぼすことが懸念されます。今回の法改正は、このような真正な音楽レコードの環流を防止し、日本の音楽産業を保護することを目的としています。
 改正法の下では、次の条件(1)~(4)を満たすレコードが輸入規制を受けることになります。

(1)商業用レコードであること
(2)国内頒布用レコードと同一であること
(3)専ら国外で頒布することを目的としたレコード(日本販売禁止レコード)であること
(4)国外で実際に発行されていること

 尚、国内頒布用レコードの国内発行日から一定期間(政令指定期間:上限7年)を経過した後は、規制を受けないことになります。

Q2 本や雑誌の貸与が勝手にできなくなるのですか?
A2 貸レコード店の急増によるレコード売上げの減少の問題を発端として、著作物の貸し出しを許可する権利である「貸与権」が1984年に創設されました。しかしながら書籍・雑誌に関しては、貸本店が新刊の売上げに及ぼす影響は少ないといったことを主な理由として、「当分の間、貸与権を適用しない」とされました。ところが大規模なレンタルコミック店が急増し、新刊本の売り上げへの影響が実際問題となりました。この状況に危機感を強めた作家・漫画家・出版業界からの要望を受けて、今回の法改正では上記暫定措置を撤廃することにし、書籍・雑誌に関しても貸与権が付与されることになりました。今後は書籍・雑誌を貸与する際、著作者(作家や漫画家)の許諾が必要になります。

Q3 どのように権利処理が行われますか?
A3 新設された「出版物貸与権管理センター」が貸与権の処理を集中して行うことになるようです。作家が権利をセンターに委託し、センターはレンタル店から使用料を徴収して作家に分配することを予定しています。現在、権利処理のスキームを構築するため、関係者団体間で協議が進められているようです。

Q4 マンガ喫茶も今回の法改正の影響を受けますか?
A4 貸与権の対象は「貸与行為」です。従って、「閲覧行為」が行われるマンガ喫茶は対象外となります。このように、マンガ喫茶は今回の法改正の影響を直接受けることはありませんが、マンガ閲覧行為による利益の取り扱いに関しては、マンガ喫茶業者の団体と漫画家など権利者の団体との間でルール作りが進められています。尚、貸与権は中古書籍等を販売する「新古書店」にも対応していません。

 

弁理士 萩野 幹治