東海会の活動について

新聞掲載記事

更新:2017/08/31

地域のための国際活動~中小企業の外国知財保護を考える~

 自社の知的財産(知財)を外国においても守りたい。そのためには、それぞれの国ごとの制度を確認し対応する必
要があります。知財制度はそれぞれの国の産業振興政策の一つとして発展した側面があり、国ごとあるいは地域ごと
にそれぞれの制度が存在します。よって日本で知財の権利を取得しても、その権利は外国には及びません。外国で知
財対策がしっかり取られていないと、思いがけず足をすくわれるおそれがあります。
 我々弁理士は日本における知財の専門家ではありますが、外国における知財の保護に関して弁理士として義務と責
任をもって遂行することも、弁理士法に書かれています。世の中の変化に伴い刻々と変化する世界の知財制度やそれ
に伴う外国知財対策を調査・研究し知財制度のユーザーである皆様に還元できるよう、日本弁理士会東海支部では国
際知財委員会を設置し、国際的な知財問題について取り組んでいます。
 ここ数年、当委員会は、日本企業の進出の著しい東南アジア、特に、タイ、インドネシア、シンガポールの知財制
度の研究を進め、セミナー等でその成果を発表して参りました。昨年度は、中小企業の外国知財対策に着目し、中小
企業の外国知財保護の現状の把握、そして、支援を進めるために弁理士ができることを研究することをテーマとして
活動しました。
 まずは、当地域の多くの企業が出展する展示会に委員会が足を運びブースを訪ね、外国知財対策に関する現状を伺
いました。すると、既に外国に進出した企業からは、外国知財対策の一番の問題は費用の問題とのご意見を頂くと共
に、外国における知財情報の把握の難しさも指摘されました。また、同じように製造業を中心とした中小企業を多く
有する名古屋市の姉妹都市である米国ロサンゼルスに視察団を派遣し、現地の知財法研究団体であるロサンゼルス知
財法協会(LAIPLA)との情報交換やロサンゼルス名古屋姉妹都市委員会(LANSCA)及びロサンゼルス市当局の方か
らお話を聞くこともしました。そして、外国における中小企業も同じような悩みに直面していることを知ることがで
きました。
 一朝一夕ではなかなか答えが出せないテーマではありますが、外国において経済活動する以上知財保護に取り組む
ことは避けられません。我々の研究結果の一部は日本弁理士会東海支部のホームページでもご覧になれますので是非
ご利用ください。今後も、地域に役立つ国際知財活動を進めていきたいと思います。

                                   国際知財委員会 弁理士 水野 祐啓

ロサンゼルス知財法協会との情報交換 ロサンゼルス知財法協会との情報交換