中部経済産業局では、東海地域における知的財産制度のさらなる普及に取り組んでいる。この知的財産制度のうち
の一制度である意匠制度の活用について、中部経済産業局の知的財産室長である大山栄成氏と、日本弁理士会東海支
部の広報企画委員長である廣田美穂氏が語り合った。
廣田:まずは、意匠制度に対してどうお考えであるかをお教え願えますか。
大山:東海地域では製造業が盛んで、モノづくりでは、製品の機能等に加えて、デザインが重要です。東海地域で
は特許が多く出願されており、愛知岐阜三重の三県の2015年の特許出願件数は約三万千件ですが、意匠出願
件数は約二千三百件となっています。この件数を見ますと、デザインの保護制度である意匠制度が十分に浸
透していないというのが現状です。デザインを守る意匠制度の利点をより多くの方に知っていただき、普及
させたい、企業の事業戦略に位置づけていただきたいと考えています。
廣田:意匠制度等の知的財産制度を広めるうえで、中部経済産業局はどう動いていますか。
大山:中小企業では弁理士との接点が無い場合もあり、知的財産制度を利用する機会が少ないのが実情です。知的
財産の重要性に気付いていない中小企業にとっては、制度の説明会に参加したり、弁理士に相談したりする
モチベーションがあまり高くありません。そこで、中部経済産業局では、中小企業の皆様に向けて、なぜ知
的財産が必要なのかを説明するための経営講座を行っています。
廣田:我々弁理士は、中小企業に対しては、知的財産をどのように積極的に活用するかということよりも先に、ま
ずは、知的財産権で保護しなければ製品を模倣されるリスクがあるという話をすることが多いです。
大山:まさに、意匠権が効果的に活用されるのは模倣品対策です。模倣品として多いのは、新興国で生産されたデ
ッドコピー品(完全複製品)です。デッドコピー品の場合、意匠権侵害の有無は、意匠登録の図面と照らし
合わせれば一目瞭然ですので、意匠権は、税関での輸入差止申立制度の利用に適しています。少なくともデ
ッドコピー品の流通を防ぐためにも、意匠権を取得しておいたほうが賢明です。
廣田:デッドコピー品を防ぐためなら、意匠出願の書類は低コストで早く準備することができます。
製品を作るうえで、設計図面やデータを作ることが多いですよね。これらを意匠出願用に加工すれば意匠図
面を作成できますので、特許出願と比較して出願費用の面でメリットがあります。
大山:意匠出願は、特許庁から最初の審査結果が通知されるまで平均6.1か月(2015年度)であり、早期に登録が
できます。近年の市場は製品デザインのトレンドの変化が早いので、早期に権利化ができるのも意匠制度の
メリットといえます。
意匠制度を利用して、デザインによる商品のブランド化を戦略的に行うことも大切です。特徴的なデザイン
を意匠制度により保護し、デザインから製造元である会社をユーザーに認識してもらうという役割も意匠制
度が担っていると考えます。
廣田:最後に、意匠制度に対する特許庁や中部経済産業局の取り組みとしてどのようなものがありますか。
大山:例えば、特許庁は、事業戦略対応まとめ審査という施策を実施しています。これは、新しい製品を出す場合
に、構造、製造技術、デザイン、ロゴ等、その製品に関する知的財産の出願をまとめて審査する施策です。
この施策を利用すれば、特許権、意匠権、及び商標権を、タイミングを合わせて権利化をすることができま
す。
中部経済産業局の取り組みとしては、意匠権を用いた知財戦略に力を入れている企業の事例集を作ろうとし
ています。意匠という言葉には難しそうなイメージがありますが、意匠制度をデザインの登録制度として身
近に感じてもらえるような事例集にしたいですね。
取材担当 弁理士 加藤 肇
の一制度である意匠制度の活用について、中部経済産業局の知的財産室長である大山栄成氏と、日本弁理士会東海支
部の広報企画委員長である廣田美穂氏が語り合った。
廣田:まずは、意匠制度に対してどうお考えであるかをお教え願えますか。
大山:東海地域では製造業が盛んで、モノづくりでは、製品の機能等に加えて、デザインが重要です。東海地域で
は特許が多く出願されており、愛知岐阜三重の三県の2015年の特許出願件数は約三万千件ですが、意匠出願
件数は約二千三百件となっています。この件数を見ますと、デザインの保護制度である意匠制度が十分に浸
透していないというのが現状です。デザインを守る意匠制度の利点をより多くの方に知っていただき、普及
させたい、企業の事業戦略に位置づけていただきたいと考えています。
廣田:意匠制度等の知的財産制度を広めるうえで、中部経済産業局はどう動いていますか。
大山:中小企業では弁理士との接点が無い場合もあり、知的財産制度を利用する機会が少ないのが実情です。知的
財産の重要性に気付いていない中小企業にとっては、制度の説明会に参加したり、弁理士に相談したりする
モチベーションがあまり高くありません。そこで、中部経済産業局では、中小企業の皆様に向けて、なぜ知
的財産が必要なのかを説明するための経営講座を行っています。
廣田:我々弁理士は、中小企業に対しては、知的財産をどのように積極的に活用するかということよりも先に、ま
ずは、知的財産権で保護しなければ製品を模倣されるリスクがあるという話をすることが多いです。
大山:まさに、意匠権が効果的に活用されるのは模倣品対策です。模倣品として多いのは、新興国で生産されたデ
ッドコピー品(完全複製品)です。デッドコピー品の場合、意匠権侵害の有無は、意匠登録の図面と照らし
合わせれば一目瞭然ですので、意匠権は、税関での輸入差止申立制度の利用に適しています。少なくともデ
ッドコピー品の流通を防ぐためにも、意匠権を取得しておいたほうが賢明です。
廣田:デッドコピー品を防ぐためなら、意匠出願の書類は低コストで早く準備することができます。
製品を作るうえで、設計図面やデータを作ることが多いですよね。これらを意匠出願用に加工すれば意匠図
面を作成できますので、特許出願と比較して出願費用の面でメリットがあります。
大山:意匠出願は、特許庁から最初の審査結果が通知されるまで平均6.1か月(2015年度)であり、早期に登録が
できます。近年の市場は製品デザインのトレンドの変化が早いので、早期に権利化ができるのも意匠制度の
メリットといえます。
意匠制度を利用して、デザインによる商品のブランド化を戦略的に行うことも大切です。特徴的なデザイン
を意匠制度により保護し、デザインから製造元である会社をユーザーに認識してもらうという役割も意匠制
度が担っていると考えます。
廣田:最後に、意匠制度に対する特許庁や中部経済産業局の取り組みとしてどのようなものがありますか。
大山:例えば、特許庁は、事業戦略対応まとめ審査という施策を実施しています。これは、新しい製品を出す場合
に、構造、製造技術、デザイン、ロゴ等、その製品に関する知的財産の出願をまとめて審査する施策です。
この施策を利用すれば、特許権、意匠権、及び商標権を、タイミングを合わせて権利化をすることができま
す。
中部経済産業局の取り組みとしては、意匠権を用いた知財戦略に力を入れている企業の事例集を作ろうとし
ています。意匠という言葉には難しそうなイメージがありますが、意匠制度をデザインの登録制度として身
近に感じてもらえるような事例集にしたいですね。
取材担当 弁理士 加藤 肇