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新聞掲載記事

更新:2016/10/31

復活した特許異議申立制度

   平成27年4月1日から特許異議申立制度が施行されております。
   特許異議申立ては、他人の特許を消滅させる一つの方法で、特許掲載公報の発行日から6月以内に何人もする
  ことができます(特許法第113条)。
   平成15年に旧異議申立制度が廃止された後、他人の特許を消滅させる方法は特許無効審判のみでしたが、特
  許異議申立制度が復活しました。
   特許庁HPに「特許異議の申立てQ&A」が掲載されております。
   特許庁に寄せられた質問に対する回答をまとめたものですが、わかりやすく説明されています。参照したい方
  は「特許異議の申立てQ&A」でWEB検索していただければすぐに見つかると思います。
   この中のA1-8.には、【特許異議申立制度と無効審判制度との比較】が記載されております。両制度を比
  較すると特許異議申立制度の特徴が理解しやすいです。
   留意すべき点を何点か記載しておきます。

  1.特許異議の申立ては、何人もすることができます。
    また、口頭審理が原則の無効審判とは違い、書面審理のみで口頭審理はありません。
    これが無効審判との大きな違いです。
    この違いは制度趣旨によるものです。特許異議申立制度は特許の早期安定化を図ることを趣旨としておりま
    すが、特許無効審判は、特許の有効性に関する当事者間の紛争解決を図ることを趣旨としております。
    特許異議の申立ては、匿名で行うことはできませんが、「何人もすることができる」ため、真の異議申立人
    を秘匿するために無関係の人の名前で行う、いわゆるダミー(の申立人)による申立は可能です。
    ★今回の改正に併せて、特許無効審判は「利害関係人に限り請求可能」とする改正がされました。
    したがって、素性を隠して他社特許を消滅させることができるのは、特許異議申立てのみとなります。

  2.利害関係人が申立人であった場合、申立人側としては特許を潰す4つのチャンスがあります。
    4つのチャンスとは、
    (1)情報提供
    (2)特許異議の申立て
    (3)特許無効審判
    (4)訴訟における無効の抗弁
    ★このうち、(1)は匿名ででき、(2)は何人もできます。
    つまり、匿名で情報提供をした後、素性を隠して特許異議申立てを行うことも可能です。


  3.特許異議の申立ての理由
    特許法第113条各号に規定された公益的事由(新規性・進歩性・明細書の記載不備など)に限られます。
    このため、共同出願違反(特許法第38条,同49条第2号)、及び、冒認出願(特許法第49条第7号)
    といった私益的事由、後発的事由(特許法第123条第1項第7号、同第8号)については、無効審判の請
    求理由にはできますが、特許異議の申立て理由とすることはできません。

  4.申立てができる時期
    特許掲載公報の発行の日から6月以内に限られます。
    他社の特許掲載公報が発行されてすぐに気付けばよいですが、気付いたときには既に4ヶ月ぐらい過ぎてい
    た…ということもよくあります。気になる会社の特許については常にウォッチしておくことが重要です。
    一方、無効審判の場合は、設定登録後であればいつでも請求できます。

  5.特許庁に支払う料金
    特許異議の申立て 16,500円+(申立てた請求項の数×2,400円)
    無効審判     49,500円+(請求した請求項の数×5,500円)

  6.手続きフロー
    特許異議申立制度の手続きフローを掲載しておきます。

                                           弁理士 岡本 武也