東海会の活動について

新聞掲載記事

更新:2005/01/29

特許相談室でのQ&A

 日本弁理士会東海支部では、毎週月曜日から金曜日(祝日を除く)の午後1時から午後4時まで、知的財産権全般について弁理士による無料の特許相談を実施しています。
 今回は、特許相談のうち「共有」に関する相談内容とその回答についてご紹介します。

Q1.私どもA社は、工作機械を製造、販売しています。このたび、研磨技術を持つB社と共同で新たな工作機械を開発しました。しかし、B社は特許出願までは考えていないようです。この場合、A社だけで特許出願できますか。
A1.特許出願は、「特許を受ける権利」を有する者が全員で行わなければなりません。この「特許を受ける権利」とは、発明者権とも呼ばれ、発明の完成と同時に発明者に帰属する権利です。通常は、出願前に、発明者である従業員から会社に譲渡されます。ご質問の場合、A社とB社はともに「特許を受ける権利」を有しており共有関係にあります。従って、A社だけで特許出願をしても出願は拒絶され、たとえ特許になっても無効理由つまり傷のある権利となってしまいます。

Q2.そうすると、私どもA社が特許出願をする手はないのでしょうか。
A2.B社は、特許となる可能性、将来の実施の可能性、特許出願にかかる費用などを考えて躊躇しているのかもしれません。B社が出願する意思がない以上、共同出願の形では出願できません。この場合には、A社とB社との話し合いにより、B社から「特許を受ける権利」の譲渡を受けてください。そうすれば、A社は単独で特許出願をすることができます。
 ただし、「特許を受ける権利」の譲渡は、共有者の同意を得なければすることができません。ご質問の場合には問題なくできますが、たとえばA社とB社のほかにC社も共同で開発したような場合には、B社は共有者であるC社の同意を得なければ持分をA社に譲渡できません。

Q3.持分とは何ですか。
A3.A社、B社あるいはC社のような各共有者は、「特許を受ける権利」の上に一定の割合で持分権を有しています。契約で別段の定めをしなければ、各共有者の持分は等しいものと推定されます。

Q4.持分が少ないと、せっかく特許をとっても特許製品の製造や販売の量が制限されるのですか。
A4.「特許を受ける権利」は、特許権の設定登録により消滅します。「特許を受ける権利」が共有であれば特許権も共有になります。所有権の共有者は、共有物の全部について持分に応じた使用収益しかできません。しかし、特許権の共有者は、契約で別段の定めがない限り、持分の多少に関係なく特許発明を実施できます。特許製品の製造や販売の量が制限されることはありません。特許発明は、無形の技術的思想であり、共有者の一人が実施しても他の共有者の実施が妨げられることはなく、持分に応じた実施ということが考えられないからです。

Q5.そうすると、持分は何に影響するのですか。
A5.「特許を受ける権利」も特許権も財産権です。従って、権利を他人に譲渡する場合の対価の分配や、特許発明を他人に実施許諾する場合の対価(ロイヤリティ)の分配に影響します。また、出願費用、登録費用、管理費用などの負担割合にも影響します。
 以上、「共有」に関する質問とその回答をご紹介しました。日本弁理士会東海支部の無料特許相談の会場、日時及び予約申し込みの詳細は、日本弁理士会のウェブサイト(日本弁理士会無料相談のアドレス)をご覧下さい。

弁理士 堀江 真一