今回の事件は、高級腕時計ブランド「フランクミュラー」のパロディー商標「フランク三浦」(図参照)が平
成24年に商標登録された後に、フランクミュラー側から無効審判を起こされたものです。まず、特許庁では無
効という審決がなされました。そしてフランク三浦側がこの無効審決の取消しを求めて裁判を起こした事件です。
知財高裁では、特許庁の無効審決の取消し、すなわち「フランク三浦」の商標登録を支持する判決がなされまし
た。
「フランク三浦」の腕時計が「フランクミュラー」の腕時計のパロディー商品であることはインターネットで
これらの腕時計を検索すれば一目瞭然です。しかしながら、それが一目瞭然なのは、商標はさておきそのデザイ
ンの共通性によるところが大きいと思われます。今回の事件はあくまでも「フランク三浦」という商標の登録の
是非について争ったものであり、判決においては腕時計のデザイン等は勘案されず、原則通り、両商標が類似し
ているのか、出所の混同が生じるのかといった商標法上の要件を忠実に判断しています。判決では、本件商標
(フランク三浦)と引用商標(フランクミュラーほか)は、称呼においては類似するものの、外観において明確
に区別し得るものであり、観念においても大きく異なる、とし、よって両商標は類似せず、出所の混同も生じな
いと判断しています。確かに、本件商標と引用商標を比べただけでは、両商標は類似しないとの判断は妥当でし
ょう。今回は「フランク三浦」の腕時計が「フランクミュラー」の腕時計のパロディー商品であるからこそ問題
になるのですが、判決では、「フランク三浦」の腕時計がパロディーに該当したとしても、そのことをもってし
て両商標が類似しているとは言えないし、出所の混同を生じるとは言えないという判断をしています。
現在の商標法では、パロディー商標をどう扱うかという規定は一切ありません。これまでのところ、パロディ
ー商標に対しては寛大に扱われることは少なく、むしろフリーライド(ただ乗り)の観点から厳しく扱われるこ
とが多い中で、今回のような判決は珍しいと言えます。しかし「フランクミュラー」側は今、知財高裁の判決を
不服として最高裁に上告しているため、最高裁でひっくり返る可能性もないとは言えません。
なお、「フランク三浦」の腕時計については一見してパロディー商品であることが明らかであるため、不正競
争防止法における不正競争行為に該当する可能性もあるでしょう。
弁理士 安達 友和
成24年に商標登録された後に、フランクミュラー側から無効審判を起こされたものです。まず、特許庁では無
効という審決がなされました。そしてフランク三浦側がこの無効審決の取消しを求めて裁判を起こした事件です。
知財高裁では、特許庁の無効審決の取消し、すなわち「フランク三浦」の商標登録を支持する判決がなされまし
た。
「フランク三浦」の腕時計が「フランクミュラー」の腕時計のパロディー商品であることはインターネットで
これらの腕時計を検索すれば一目瞭然です。しかしながら、それが一目瞭然なのは、商標はさておきそのデザイ
ンの共通性によるところが大きいと思われます。今回の事件はあくまでも「フランク三浦」という商標の登録の
是非について争ったものであり、判決においては腕時計のデザイン等は勘案されず、原則通り、両商標が類似し
ているのか、出所の混同が生じるのかといった商標法上の要件を忠実に判断しています。判決では、本件商標
(フランク三浦)と引用商標(フランクミュラーほか)は、称呼においては類似するものの、外観において明確
に区別し得るものであり、観念においても大きく異なる、とし、よって両商標は類似せず、出所の混同も生じな
いと判断しています。確かに、本件商標と引用商標を比べただけでは、両商標は類似しないとの判断は妥当でし
ょう。今回は「フランク三浦」の腕時計が「フランクミュラー」の腕時計のパロディー商品であるからこそ問題
になるのですが、判決では、「フランク三浦」の腕時計がパロディーに該当したとしても、そのことをもってし
て両商標が類似しているとは言えないし、出所の混同を生じるとは言えないという判断をしています。
現在の商標法では、パロディー商標をどう扱うかという規定は一切ありません。これまでのところ、パロディ
ー商標に対しては寛大に扱われることは少なく、むしろフリーライド(ただ乗り)の観点から厳しく扱われるこ
とが多い中で、今回のような判決は珍しいと言えます。しかし「フランクミュラー」側は今、知財高裁の判決を
不服として最高裁に上告しているため、最高裁でひっくり返る可能性もないとは言えません。
なお、「フランク三浦」の腕時計については一見してパロディー商品であることが明らかであるため、不正競
争防止法における不正競争行為に該当する可能性もあるでしょう。
弁理士 安達 友和