政府の知的財産戦略本部は2004年11月24日、コンテンツ専門調査会日本ブランド・ワーキンググループの第1回会合を開催しました。グローバリゼーションが進展する中で、「国家にもブランド戦略が必要である」として、エンターテイメント、コンテンツの他、食、ファッション、地域ブランドの振興を図るとともに、日本の知的・文化資産の魅力を国内外に向けて積極的に情報発信する仕組みを国の戦略として立案し、(1)ソフトパワー、(2)日本のイメージ向上、(3)観光立国、(4)産業競争力の強化に結びつけることを目的としています。
実は、このような国家ブランド戦略は目新しいものではなく、英・仏・伊・米などの諸外国でも既に行われています。特に、大英帝国の遺産にしがみついているというような負のイメージを払拭したいと考えていたイギリスでは、1997年以降「トレードマーク・ブリテン」戦略として、具体的に「国家広報戦略」とデザイン、音楽など13分野の「クリエイティブ産業振興」を進めています。
ところで、3Mでは自社の独自技術を組み合わせた「テクノロジー・プラットフォーム」と呼ばれる30程度の技術基盤を選定して研究開発の中核としています。デュポン、三菱化学などの企業もこのような「技術プラットフォーム」を定めていますが、このように「コア技術の同定」の作業を行い、まずは自社の独自技術を明確にして、新たな製品・市場を生み出そうとするR&Dマネジメント手法を取り入れる企業が増えています。
また、新しい市場は、必ずしも、全く新しい技術などの創作物からしか生まれないものではありません。価格競争にしたがって血を流しながらシェア獲得を図らなければならない市場(通称「レッド・シー市場」)ではなく、競合のない新たな市場(通称「ブルー・シー市場」と呼ばれています)を自ら作り出した企業の事例百数十件を取り上げて行ったある米国の研究によると、まったく新しいイノベーションから産まれた事例は、その中のわずか数例に過ぎず、大多数の事例が、既存技術の単なる利用か、自社従来技術の改良程度に基づくものに過ぎなかったそうです。
イノベーティブであるということは、これから新しい技術などの創作物を生み出すことができなければ到達し得ないということではなく、「既に存在する『独自性を発展させる』」という視点を突き詰めることでも可能だということを示唆しているような気がします。
ブランドを確立するにも、技術を利用して新しい市場を生み出すにも、アピールすべき自分自身の独自性がどのようなものなのかを十分に吟味することから始まることに留意すべきでしょう。
弁理士 村山 信義