佐野研二郎氏の作品「2020東京オリンピックエンブレム」のロゴが、ベルギーのリエージュ劇場のロゴと
類似?(第一事件)しているとの指摘を受けて、取り下げとなったことは皆さんの記憶に新しいことですが、今
度は、東京都が採用したエンブレム「&TOKYO」(博報堂 永井一史氏監修)がニュージーランドの法律事務所
「JONES&CO」のロゴタイプ「&」等と酷似(第二事件)するという指摘を受けています。東京都知事は、こ
の指摘に対し「&」という記号に関するもので佐野氏のエンブレムの問題とは全く違うという趣旨の反論をして
います。何かしっくりしないですね。どうしてこのような差が生じるかをわかりやすく説明しましょう。
著作権侵害の問題を考えるときには、先ず(1)問題となるロゴが著作物か否か、次に(2)比較したエンブ
レムやロゴが実質的に同一又は類似しているか否か、最後に(3)デザイナーがエンブレムを創作するにあたり、
問題視されているロゴを参考にしたか否か(オリジナリティー)の順で考えるとわかりやすいです。
第一事件ではリエージュ劇場のロゴが著作物であるとの前提での争いで(1)著作物性は争点になりませんで
した。(2)エンブレムとロゴが実質的に同一又は類似しているかに関しては、うやむやのまま取り下げられま
したが公表された原作品と最終的に発表されたエンブレムに違いがあることは認識されたと思います。結局のと
ころ(3)佐野氏がそのロゴを知っていたか否かが著作権侵害の争点になりました。しかし、多くの専門家が著
作権侵害ではないと説明しています。何故でしょうか。ロゴの作成過程では、コンセプトが重要になり、そのコ
ンセプトに合わせてデザインを創作します。その結果、出発点が異なっても結果的に作品が他のデザインと類似
することがあります。この場合、人間の創作活動は異なるものですので両者に著作権を認めているのです。問題
は、他人の作品を見てそれを参考にして創作したか否かです。参考の程度により創作性のあるなしの判断が異な
ります。盗用すれば創作性なしとして新たな著作権は発生しませんので権利侵害と考えるのです。
第二事件は、ロゴとしてはほぼ同じですが、前提となるJONES&COの「&を○で囲った」ロゴが(1)著作
物でないという考えに
より、著作権侵害の問題がないと判断したものと思われます。従来からある書体から大きく外れる書体でない限
り著作物と認められません。著作物に該当しなければ道義上は別として法律上の問題は生じませんが、作成者が
特定できる場合には了承を得ておくことをお勧めします。
弁理士 飯田 昭夫
類似?(第一事件)しているとの指摘を受けて、取り下げとなったことは皆さんの記憶に新しいことですが、今
度は、東京都が採用したエンブレム「&TOKYO」(博報堂 永井一史氏監修)がニュージーランドの法律事務所
「JONES&CO」のロゴタイプ「&」等と酷似(第二事件)するという指摘を受けています。東京都知事は、こ
の指摘に対し「&」という記号に関するもので佐野氏のエンブレムの問題とは全く違うという趣旨の反論をして
います。何かしっくりしないですね。どうしてこのような差が生じるかをわかりやすく説明しましょう。
著作権侵害の問題を考えるときには、先ず(1)問題となるロゴが著作物か否か、次に(2)比較したエンブ
レムやロゴが実質的に同一又は類似しているか否か、最後に(3)デザイナーがエンブレムを創作するにあたり、
問題視されているロゴを参考にしたか否か(オリジナリティー)の順で考えるとわかりやすいです。
第一事件ではリエージュ劇場のロゴが著作物であるとの前提での争いで(1)著作物性は争点になりませんで
した。(2)エンブレムとロゴが実質的に同一又は類似しているかに関しては、うやむやのまま取り下げられま
したが公表された原作品と最終的に発表されたエンブレムに違いがあることは認識されたと思います。結局のと
ころ(3)佐野氏がそのロゴを知っていたか否かが著作権侵害の争点になりました。しかし、多くの専門家が著
作権侵害ではないと説明しています。何故でしょうか。ロゴの作成過程では、コンセプトが重要になり、そのコ
ンセプトに合わせてデザインを創作します。その結果、出発点が異なっても結果的に作品が他のデザインと類似
することがあります。この場合、人間の創作活動は異なるものですので両者に著作権を認めているのです。問題
は、他人の作品を見てそれを参考にして創作したか否かです。参考の程度により創作性のあるなしの判断が異な
ります。盗用すれば創作性なしとして新たな著作権は発生しませんので権利侵害と考えるのです。
第二事件は、ロゴとしてはほぼ同じですが、前提となるJONES&COの「&を○で囲った」ロゴが(1)著作
物でないという考えに
より、著作権侵害の問題がないと判断したものと思われます。従来からある書体から大きく外れる書体でない限
り著作物と認められません。著作物に該当しなければ道義上は別として法律上の問題は生じませんが、作成者が
特定できる場合には了承を得ておくことをお勧めします。
弁理士 飯田 昭夫