商標法の改正により、2015年4月1日から、色彩のみからなる商標や音の商標など「新しいタイプの商標」
が出願できるようになりました。これまで日本では、商標法に商標の定義が規定されており、商標とは「文字、
図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」であると規定されていました。
従いまして、色彩は、単独では商標として出願することができず、文字や図形など他の要素と組み合わせること
で商標として出願し、登録することができました。しかし、以前からコーポレートカラーを商標として登録した
いという要望が企業からあり、また諸外国では識別性を有することを条件に色彩のみを商標として登録を認めて
いる国も数多く存在することから、法改正により商標の定義が変更されました。現行法では、商標とは「人の知
覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、
音その他政令で定めるもの」であると規定されました。これにより色彩のみからなる商標の出願が可能となりま
した。
特許庁のデータベースによれば、2015年4月1日に「新しいタイプの商標」は、481件出願されており、
そのうち色彩のみからなる商標は192件出願されています。特許事務所の中には、依頼を受けた全ての「新し
いタイプの商標」の出願を4月1日に行うために、商標担当者が前の日から泊り込みで日付がかわるのと同時に
端末を操作したという話を聞きました。また、「新しいタイプの商標」の登録が可能となったという話題は、新
聞やテレビ、インターネットのニュースでも大きく取り上げられましたので、出願の例として紹介された企業に
とっては良い宣伝になったことと思います。余談ですが、「新しいタイプの商標」の1番乗りの出願は、小林製
薬の音の商標であり(商願2015-029804)、色彩のみからなる商標の1番乗りの出願は、久光製薬の
青色、白色、緑色の色彩の組合せからなる商標でした(商願2015-029831)。4月1日以降も出願件
数は伸び、2015年7月8日時点で、「新しいタイプの商標」は、802件出願されており、そのうち色彩の
みからなる商標は347件出願されています。
それでは、具体的にどのような商標が出願されているのかご説明いたします。特許庁のインターネットサイト
では、色彩のみからなる商標は、「単色又は複数の色彩の組合せのみからなる商標(これまでの図形等と色彩が
結合したものではない商標)」であり、「例えば、商品の包装紙や広告用の看板に使用される色彩など」と説明
されています。しかし、実際に出願された商標を見てみますと、商品の全体または一部の色彩を出願しているも
のも多くあります。出願されたものの中には、一目見てどこの企業のどの商品の商標かわかるものもあれば、そ
うでないものもあります。ご参考までに出願された商標をいくつかご紹介いたしますので、どこの企業の商標か
考えてみて下さい。
では、これらの出願された色彩のみからなる商標は、無事に登録となるのでしょうか。特許庁は、昨年の商標
審査基準の説明会で、「色彩のみからなる商標は、原則として、自他商品・役務の識別力を有しないものとする」
と説明しています。従いまして、色彩のみからなる商標を出願した場合、原則として、識別性がないという理由
で拒絶理由通知が出されます。これに対して、意見書を提出し、出願商標は使用により識別性を獲得していると
主張立証することで登録となる可能性はあります。宣伝広告や売上高、市場シェアのデータなど、商標の使用実
績を示す証拠資料をできるだけ多く提出することが重要です。
また、色彩のみからなる商標が登録された場合、同一または類似する色彩を登録商標の指定商品と同一または
類似する商品について、権利者以外の者は、一切使用することはできなくなるのでしょうか。この点につきまし
ては、「継続的使用権」というものが規定されており、改正法の施行日前から使用している新しいタイプの商標
については、商標登録をしなくても、従来の業務範囲内で使い続けることができます。
弁理士 矢代 加奈子
が出願できるようになりました。これまで日本では、商標法に商標の定義が規定されており、商標とは「文字、
図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」であると規定されていました。
従いまして、色彩は、単独では商標として出願することができず、文字や図形など他の要素と組み合わせること
で商標として出願し、登録することができました。しかし、以前からコーポレートカラーを商標として登録した
いという要望が企業からあり、また諸外国では識別性を有することを条件に色彩のみを商標として登録を認めて
いる国も数多く存在することから、法改正により商標の定義が変更されました。現行法では、商標とは「人の知
覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、
音その他政令で定めるもの」であると規定されました。これにより色彩のみからなる商標の出願が可能となりま
した。
特許庁のデータベースによれば、2015年4月1日に「新しいタイプの商標」は、481件出願されており、
そのうち色彩のみからなる商標は192件出願されています。特許事務所の中には、依頼を受けた全ての「新し
いタイプの商標」の出願を4月1日に行うために、商標担当者が前の日から泊り込みで日付がかわるのと同時に
端末を操作したという話を聞きました。また、「新しいタイプの商標」の登録が可能となったという話題は、新
聞やテレビ、インターネットのニュースでも大きく取り上げられましたので、出願の例として紹介された企業に
とっては良い宣伝になったことと思います。余談ですが、「新しいタイプの商標」の1番乗りの出願は、小林製
薬の音の商標であり(商願2015-029804)、色彩のみからなる商標の1番乗りの出願は、久光製薬の
青色、白色、緑色の色彩の組合せからなる商標でした(商願2015-029831)。4月1日以降も出願件
数は伸び、2015年7月8日時点で、「新しいタイプの商標」は、802件出願されており、そのうち色彩の
みからなる商標は347件出願されています。
それでは、具体的にどのような商標が出願されているのかご説明いたします。特許庁のインターネットサイト
では、色彩のみからなる商標は、「単色又は複数の色彩の組合せのみからなる商標(これまでの図形等と色彩が
結合したものではない商標)」であり、「例えば、商品の包装紙や広告用の看板に使用される色彩など」と説明
されています。しかし、実際に出願された商標を見てみますと、商品の全体または一部の色彩を出願しているも
のも多くあります。出願されたものの中には、一目見てどこの企業のどの商品の商標かわかるものもあれば、そ
うでないものもあります。ご参考までに出願された商標をいくつかご紹介いたしますので、どこの企業の商標か
考えてみて下さい。
では、これらの出願された色彩のみからなる商標は、無事に登録となるのでしょうか。特許庁は、昨年の商標
審査基準の説明会で、「色彩のみからなる商標は、原則として、自他商品・役務の識別力を有しないものとする」
と説明しています。従いまして、色彩のみからなる商標を出願した場合、原則として、識別性がないという理由
で拒絶理由通知が出されます。これに対して、意見書を提出し、出願商標は使用により識別性を獲得していると
主張立証することで登録となる可能性はあります。宣伝広告や売上高、市場シェアのデータなど、商標の使用実
績を示す証拠資料をできるだけ多く提出することが重要です。
また、色彩のみからなる商標が登録された場合、同一または類似する色彩を登録商標の指定商品と同一または
類似する商品について、権利者以外の者は、一切使用することはできなくなるのでしょうか。この点につきまし
ては、「継続的使用権」というものが規定されており、改正法の施行日前から使用している新しいタイプの商標
については、商標登録をしなくても、従来の業務範囲内で使い続けることができます。
弁理士 矢代 加奈子