1.研究テーマ
日本弁理士会東海支部意匠商標委員会では、意匠分野と商標分野におけるそれぞれの研究テーマとして、意匠
の国際登録制度(ハーグ協定ジュネーブアクト)と、新しいタイプの商標に関する商標審査基準改訂の検討を行
いました。
2.意匠の国際登録制度(ハーグ協定ジュネーブアクト)の検討
本年5月13日より、わが国において、意匠の国際登録制度(ハーグ協定ジュネーブアクト)が利用可能とな
ります。意匠の国際登録制度とは、特許におけるPCTや商標におけるマドリッドプロトコルに相当する制度で、
願書を1部提出するだけで、複数の加盟国を指定して出願できるというものです。
この制度のメリットとしては、出願時に各国の現地代理人を介することなく出願できるため、出願費用の節約
が期待できる点にあります。また、一定の要件を満たす意匠であれば、1出願で最大100意匠を出願できる等、
手続きの簡略化が期待できます。
一方、この制度の注意点としては、各国における審査が始まる前に意匠が公開されてしまう点があります。こ
の点は、登録された意匠のみが公開され、拒絶された意匠は公開されないという日本の意匠制度と大きく異なり
ます。出願していること自体を知られたくない意匠を出願する場合等には、本制度を利用するか否かを慎重に検
討する必要があります。
3.新しいタイプの商標に関する商標審査基準改訂の検討
本年4月1日より商標法が改正され新しいタイプの商標が導入されました。新しく導入されたのは、次の5種
類です。
(1)動き商標・・・文字や図形などが時間の経過に伴って変化(移動)する商標
(2)色彩のみからなる商標・・・単色又は複数の色彩の組み合わせからなる商標
(3)ホログラム商標・・・文字や図形などが、ホログラフィーその他の方法により変化(移動)する商標
(4)音商標・・・音楽や音声などからなる商標であり聴覚で認識される商標
(5)位置商標・・・図形などの商標であって商品などに付す位置が特定されるもの
ところで、商標が登録を受けるためには、自他商品役務の識別力(他人の商品と区別する目印となる機能)が
あること、先願の商標と同一又は類似でないこと等の要件があります。今回の商標審査基準の改訂において、新
しいタイプの商標についての自他商品役務の識別力の有無の判断や、他の商標との類似・非類似の判断等につい
て、審査基準の追加や変更がありました。
例えば、「音商標」については、オリジナル曲であっても、需要者から楽曲としてのみ認識される音からなる
商標は、原則として自他商品役務の識別力を有さないと規定されています。このような音商標について商標登録
を希望する場合には、商標の使用証拠を提出する等により、その音商標が広く使用されたことによって有名にな
っており、自他商品役務の識別性を獲得しているといった主張する必要があります。
平成26年度意匠商標委員会 弁理士 伊藤 孝太郎
日本弁理士会東海支部意匠商標委員会では、意匠分野と商標分野におけるそれぞれの研究テーマとして、意匠
の国際登録制度(ハーグ協定ジュネーブアクト)と、新しいタイプの商標に関する商標審査基準改訂の検討を行
いました。
2.意匠の国際登録制度(ハーグ協定ジュネーブアクト)の検討
本年5月13日より、わが国において、意匠の国際登録制度(ハーグ協定ジュネーブアクト)が利用可能とな
ります。意匠の国際登録制度とは、特許におけるPCTや商標におけるマドリッドプロトコルに相当する制度で、
願書を1部提出するだけで、複数の加盟国を指定して出願できるというものです。
この制度のメリットとしては、出願時に各国の現地代理人を介することなく出願できるため、出願費用の節約
が期待できる点にあります。また、一定の要件を満たす意匠であれば、1出願で最大100意匠を出願できる等、
手続きの簡略化が期待できます。
一方、この制度の注意点としては、各国における審査が始まる前に意匠が公開されてしまう点があります。こ
の点は、登録された意匠のみが公開され、拒絶された意匠は公開されないという日本の意匠制度と大きく異なり
ます。出願していること自体を知られたくない意匠を出願する場合等には、本制度を利用するか否かを慎重に検
討する必要があります。
3.新しいタイプの商標に関する商標審査基準改訂の検討
本年4月1日より商標法が改正され新しいタイプの商標が導入されました。新しく導入されたのは、次の5種
類です。
(1)動き商標・・・文字や図形などが時間の経過に伴って変化(移動)する商標
(2)色彩のみからなる商標・・・単色又は複数の色彩の組み合わせからなる商標
(3)ホログラム商標・・・文字や図形などが、ホログラフィーその他の方法により変化(移動)する商標
(4)音商標・・・音楽や音声などからなる商標であり聴覚で認識される商標
(5)位置商標・・・図形などの商標であって商品などに付す位置が特定されるもの
ところで、商標が登録を受けるためには、自他商品役務の識別力(他人の商品と区別する目印となる機能)が
あること、先願の商標と同一又は類似でないこと等の要件があります。今回の商標審査基準の改訂において、新
しいタイプの商標についての自他商品役務の識別力の有無の判断や、他の商標との類似・非類似の判断等につい
て、審査基準の追加や変更がありました。
例えば、「音商標」については、オリジナル曲であっても、需要者から楽曲としてのみ認識される音からなる
商標は、原則として自他商品役務の識別力を有さないと規定されています。このような音商標について商標登録
を希望する場合には、商標の使用証拠を提出する等により、その音商標が広く使用されたことによって有名にな
っており、自他商品役務の識別性を獲得しているといった主張する必要があります。
平成26年度意匠商標委員会 弁理士 伊藤 孝太郎