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新聞掲載記事

更新:2015/03/31

中国の特許・実用新案制度~日本からの出願時の留意点~

 1.はじめに
   中国政府の「自主創新」のスローガンのもと、中国の特許、実用新案の出願件数は右肩上がりの増加を続けて
  おり、今後、日本企業が中国企業から権利行使を受ける事態が増加していくと考えられる。中国への出願は、自
  社の権利行使が可能となるだけでなく、他社による権利化を防ぐため、また他社から権利行使を受けた場合のク
  ロスライセンスの備えとして、重要である。本稿では、日本企業が中国へ特許、実用新案の出願をする際の留意
  点を説明する。

 2.中国の特許制度
   日本と同様、実体審査を経て、登録がなされる。存続期間は出願から20年である。
   日本との主な相違点は、以下の通りである。
   (1)ソフトウェア関連の発明について、プログラムそのものや、プログラムを記録した媒体は保護対象とな
      らない。
   (2)新規性喪失の例外規定について、日本よりも適用範囲が狭い。
   (3)出願時に公開されていない自分の先願によって自分の出願が拒絶される(自己衝突)。
   (4)補正については、日本よりも認められる範囲が狭い。
   (5)特許から実用新案、実用新案から特許、といった出願種別の変更は出来ない。

 3.中国の実用新案制度
   日本と同様、実体審査をせずに、登録がなされる。存続期間は出願から10年である。
   日本の実用新案権と比べて、中国の実用新案権は、(1)警告時に技術評価書の提示が不要、(2)侵害者に
  過失が推定される、(3)権利者に高度な注意義務が課されない、という点で、権利行使をしやすい制度となっ
  ている。
   また、実用新案権に要求される進歩性のハードルは低く、実用新案権を無効にするために使用できる従来技術
  文献の分野や数には制限がある。
   すなわち、中国の実用新案権は、使いやすく、潰しにくい権利といえる。
   実用新案権の保護対象は、「製品の形状、構造、またはその結合」とされており、具体的には、機械的な製品、
  電気回路、システムなどが該当する。ただし、製造方法や材料に改良が存在する場合は、実用新案権の保護対象
  とならない。
   中国特有の制度として、特実二重出願という制度がある。この制度を使うと、同じアイディアについて、特許
  が登録されるまでは実用新案権で保護し、特許が登録されると特許権で保護する、ということが可能となる。
  特に、日本から中国へ出願する場合には、中国語の翻訳文を共通して使えるため、特実二重出願の活用を検討す
  べきである。

                               知的財産権制度推進委員会 弁理士 佐藤 大輔