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新聞掲載記事

更新:2015/02/27

意匠法の改正について~複数国一括出願が可能となります~

   具体的な時期は未定ですが、今年の春ごろに改正意匠法の施行が見込まれています。そこで、今回は、意匠法
  の改正の内容について簡単に解説いたします。

  1.意匠法の改正の目的
    今回の意匠法の改正の目的は、加盟の準備が進められている「意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネ
   ーブ改正協定(ハーグ協定のジュネーブアクト)」に基づいて、複数国へ一括出願するための規定を整備する
   ことです(このように、日本から各国へなされる出願を、「国際登録出願」といいます)。
    これまで、特許については「特許協力条約(PCT)」、商標については「マドリッド協定の議定書(マド
   プロ)」によって、複数国へ一括出願できましたが、意匠についても、いよいよ一括出願ができるようになり
   ます。
    また、併せて、各国から日本へなされる出願についても、ハーグ協定ジュネーブアクトに基づいて適切に審
   査等するための規定が整備されます(このような出願を「国際意匠登録出願」といいます)。

  2.国際登録出願の概要
    以下、日本から加盟国へなされる「国際登録出願」の概要を説明します。
    (1)国際登録出願による手続の流れ ※図参照
       現在、ハーグ協定に加盟しているのは、60の国や地域です。日本の出願人の出願が多い国では、欧
       州・韓国が加盟済み、日本・米国が加盟予定、中国が加盟を検討中となっています。
    (2)メリット
       a)複数の加盟国へ一括で出願できます。
       b)費用が安いです。
       c)ご自宅のパソコンからご自分で簡単に出願手続ができます。
       d)図面の要件が日本ほど厳しくありません(ただし、下記(3)c)にご留意ください)。
       e)ロカルノ分類の同一区分内であれば、1つの出願に最大100意匠まで含めることができます
         (ただし、下記(3)c)にご留意ください)。
       f)各国での審査期間(拒絶通報が出される期限)が定められているので、一定期間内に権利の有効
         性の見通しを立てることができます。
       g)権利の管理が簡単です(更新・移転等の手続は国際事務局に行えばよく、国ごとに行う必要があ
         りません)。
    (3)注意点
       一見するとメリットは大きいようですが、特に、以下の点には注意が必要です。
       a)国際公表
         原則として、国際登録から6か月で国際公表なされます。国際公表の繰り延べ請求もできますが、
         審査開始に国際公表を要求する国(日本等)や、「繰り延べ請求不可」の宣言国の指定等すると、
         登録前に意匠の内容が公開され得ることに注意が必要です。
       b)拒絶通報の内容公開
         審査国で拒絶通報が出されると、拒絶通報の内容(先行意匠の情報等含む)が国際登録簿に記録
         され、その情報は、手数料を支払えば誰でも入手できます。このため、競合他社にとって権利抵
         触回避や権利行使の参考情報になり得ることに注意が必要です。
       c)各国の宣言事項
         加盟国は、ハーグ協定の基本ルールとは異なる運用を行う宣言ができます(日本・米国・中国等
         は、そのような宣言をする予定と言われています)。例えば、図面に関する特有の要求、一出願
         一意匠の原則の採用、国際公表の「繰り延べ請求不可」等が宣言予定事項として挙げられており、
         各指定国の宣言に注意が必要です。

   以上のように、メリット・注意点の双方を理解した上で、国際登録出願を活用されることをお勧めいたします。
   (なお、本稿は、2015年1月15日時点の公開情報に基づいておりますので、最新の情報をご確認くださ
    い。)

                                           弁理士 廣田 美穂

国際登録出願による手続の流れ 国際登録出願による手続の流れ

ハーグ協定制度で登録された意匠の例 ハーグ協定制度で登録された意匠の例