平成25年9月27日の朝刊に「アップルに賠償命令 東京地裁 iPodが特許侵害」などという記事が載
った。今年4月24日の夕刊には「アップル、二審も賠償命令 iPod巡り知財高裁判決」などと書かれた。
勝訴したのは東京の個人発明家で齋藤憲彦氏の会社。会社といっても実態は個人という。報道記事によれば、
齋藤氏はIT企業でコンピュータの入出力に関するソフト開発を担当していたが、独立して技術開発会社を設立
した。平成10年ころコンピュータの入力装置などいくつかの発明をして会社名義で特許出願しており、今回の
特許発明もその一つであるが登録になったのはこれだけのようだ。
侵害したとされるアップル社のiPodのクリックホイールは、ドーナツ状のタッチセンサーを指でなぞって
操作し、それによってメニューカーソルを上下させ、あるいは音量を増減する一方、タッチセンサーの一部を強
めに押し下げることによって各種スイッチをオンオフできるという構造になっている。裁判所はこの構造が本件
特許権を侵害すると判断したのである(ただし双方上告中でまだ高裁判決は確定していない。)。実際本件特許
の構成はクリックホイールの構造をそのまま特許にしたような内容であるが、この構成は実は登録後にさらに審
判を経て訂正した結果であって、出願した当初はこれとは相当異なる内容であった。齋藤氏は、当初の出願から
アップル社に対する訴訟に勝訴するまで担当の弁理士とともに特許権の内容を強固にするため、並々ならぬ努
力をしていたのである。
ところで、アップルは平成13年10月iPodを発売し平成15年までに5機種を出したが、入力装置はク
リックホイールのように小さく扱いやすいものではなかった。そこで齋藤氏はまだ出願しただけで登録にはなっ
ていないのに、アップルに自分の発明が優れたものだから使ってくれないかと売込みに行った。が、ロイヤリテ
ィで折り合えなかったらしく話がまとまらなかった。その後間もない平成16年7月クリックホイールを搭載し
たiPodminiが発売されため齋藤氏は自分の権利を侵害されたと思った。そのころ齋藤氏の出願は特許庁
から2度にわたって拒絶璃由通知を受けており、このままでは登録されないおそれが高かった。そこで、ITに
強い弁理士に相談し、当初出願からの分割出願をして改めて登録を目指すことにした。アップル社に何とかして
自分の発明を認めさせたいという気持ちであったのだろう。
弁理士 相羽 洋一
った。今年4月24日の夕刊には「アップル、二審も賠償命令 iPod巡り知財高裁判決」などと書かれた。
勝訴したのは東京の個人発明家で齋藤憲彦氏の会社。会社といっても実態は個人という。報道記事によれば、
齋藤氏はIT企業でコンピュータの入出力に関するソフト開発を担当していたが、独立して技術開発会社を設立
した。平成10年ころコンピュータの入力装置などいくつかの発明をして会社名義で特許出願しており、今回の
特許発明もその一つであるが登録になったのはこれだけのようだ。
侵害したとされるアップル社のiPodのクリックホイールは、ドーナツ状のタッチセンサーを指でなぞって
操作し、それによってメニューカーソルを上下させ、あるいは音量を増減する一方、タッチセンサーの一部を強
めに押し下げることによって各種スイッチをオンオフできるという構造になっている。裁判所はこの構造が本件
特許権を侵害すると判断したのである(ただし双方上告中でまだ高裁判決は確定していない。)。実際本件特許
の構成はクリックホイールの構造をそのまま特許にしたような内容であるが、この構成は実は登録後にさらに審
判を経て訂正した結果であって、出願した当初はこれとは相当異なる内容であった。齋藤氏は、当初の出願から
アップル社に対する訴訟に勝訴するまで担当の弁理士とともに特許権の内容を強固にするため、並々ならぬ努
力をしていたのである。
ところで、アップルは平成13年10月iPodを発売し平成15年までに5機種を出したが、入力装置はク
リックホイールのように小さく扱いやすいものではなかった。そこで齋藤氏はまだ出願しただけで登録にはなっ
ていないのに、アップルに自分の発明が優れたものだから使ってくれないかと売込みに行った。が、ロイヤリテ
ィで折り合えなかったらしく話がまとまらなかった。その後間もない平成16年7月クリックホイールを搭載し
たiPodminiが発売されため齋藤氏は自分の権利を侵害されたと思った。そのころ齋藤氏の出願は特許庁
から2度にわたって拒絶璃由通知を受けており、このままでは登録されないおそれが高かった。そこで、ITに
強い弁理士に相談し、当初出願からの分割出願をして改めて登録を目指すことにした。アップル社に何とかして
自分の発明を認めさせたいという気持ちであったのだろう。
弁理士 相羽 洋一