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新聞掲載記事

更新:2014/07/31

特許出願の補正について(上)

   発明協会は、アンケート結果による「戦後日本のイノベーション100選」のトップ10を発表しました。トッ
  プ10には、内視鏡、インスタントラーメン、新幹線、ウォークマン、ウォシュレット、家庭用ゲーム機、発光ダ
  イオード、ハイブリッド車などが並びます。これらの技術は特許権によって保護され、商品化されてきました。技
  術の改良も活発に行われ、その結果、我々の暮らしは便利で快適なものになりました。
   特許権による保護を受けるために特許出願をします。特許出願は、技術の内容を「明細書」という書類に詳しく
  書き表し、さらに、明細書に書いた技術のうち特許を受けたい発明を「特許請求の範囲」という書類に書いて、そ
  れらの書類を特許庁に提出する(インターネットを使ってデータを特許庁へ送信する)ことによって行われます。
   特許庁の審査官は、特許出願について特許できるかどうかを審査し、特許できないと思う場合には、その理由を
  出願人に知らせます。審査官が特許できないと思う理由のなかで一番多いものは、「特許請求の範囲に書かれた発
  明は、通常の人であれば容易に思いつく」というものです。
   特許出願の出願人は、特許にするために「審査官さんはそう言いますが、こういう訳なので、容易に思いつくも
  のではありません」と反論することができます。併せて、特許請求の範囲の補正(補充・訂正)を行うことができ
  ます。補正は明細書に示された範囲内で行うことができるので、明細書の中から「容易に思いつくことができない
  レベル」の発明を探して、その発明を「特許請求の範囲」に書くことができれば、特許を受けることができます。
  特許権の範囲は「特許請求の範囲」に書かれた内容によって決まるので、通常、補正後の特許権の範囲は、特許出
  願時に考えていた特許権の範囲と比較して狭くなります。
   特許を受けるために補正は有効な手段ですが、特許権の範囲を変えることになるので、よく考えて行うことが必
  要です。特許権の範囲が狭くなれば、競合他社はその特許権から逃れやすくなるので、類似する商品の製造販売を
  比較的自由に行うことができるからです。昨年度の特許委員会では、補正の内容が争いの原因の一つとなった裁判
  例などの調査研究を行いました。次回は、その結果の一部を紹介します。

                                      特許委員会 弁理士 林 洋志