東海会の活動について

新聞掲載記事

更新:2014/06/30

コミュニケーションの促進と知財活用

   「生徒はいい目をしている。親もいい。地域の人たちも立派な人ばかり。なのに生徒があれる。何故?。」、
   「それはコミュニケーションが足りていないのが原因だ。」
    ある中学校長の話である。
    企業社会においても同じである。コミュニケーションの断絶が組織を硬直なものとし、社内の創作的な活動
   を阻害する。社内の創作活動が停滞すると、新製品の開発はなかなかうまくいかない。互いに無関心な状態が
   長く続くとそれが組織風土となって、社員同士が互いに触発されることがなくなり、よいアイデアが出難くな
   るからである。
    大企業に比べると、社員数が少なくコミュニケーションの促進が図りやすいと思われる中小企業であっても、
   コミュニケーションの断絶が問題になっている。中小企業の経営者からこんな話を聞いたことがある。「コミ
   ュニケーションの促進のために社内でイベントを開催しても、そもそもイベントに参加しない者がいる。どう
   やったら最近の若者の関心を惹くことができるのだろうか?」。
    コミュニケーションの促進を図る一つの手段として、知財活動が有効だ。これまで特許申請=知財活動と考
   えてきた中小企業の方からすれば、「知財がコミュニケーションの促進とどう関係するのか?」と思われるかも
   しれない。しかし、特許申請だけを社内の知財活動とするのはもったいない話である。知財活動は、組織風土
   の改善にもつながるのである。
    知財の創出にあたり、従業員に対して月何件のアイデア提出といったノルマを与える方法が古くからある。
    しかし、中小企業では、従業員がいざアイデアシートを記入しようとしても何を書いていいかわからないこ
   とがある。アイデアシートがそのまま出しっぱなしにされることもある。こんなことを書いてもいいのだろう
   かと経営者に対して萎縮してしまう人もいる。
    過去に中小企業の従業員の方々と一緒にアイデア出しを行ったことがある。弁理士である当方は、その会の
   進行役として、異なる切り口を提供したり、他のバリエーションの可能性についてさらなる議論のきっかけを
   つくったり、ときには自ら積極的にアイデアを出したりするという役割をした。リラックスした状態でワイワ
   イと他者のアイデアに自分のアイデアをのせていく。また自分のアイデアに他者がさらなるアイデアをのせて
   いく。このような過程を通じてアイデアがブラッシュアップされるとともに、従業員間のコミュニケーション
   の促進が図られ、社内の風通しもよくなってくる。
    弁理士は、常日頃から発明者に対するヒアリング、特許明細書の作成を実施しており、技術課題の設定、発
   明の本質の把握、発明の膨らまし方を知っている。このように社内のアイデア出しの進行役として弁理士を活
   用してはいかがだろう。
    「最近、知財活動を通じて社員の目が活き活きとしてきた。」 中小経営者がそう思えたとしたら、それは
   もう知財を活用しているといっていい。コミュニケーションの促進といった経営課題の克服に知財の創作活動
   を利用する。これだって経営に知財を活用する知財経営の実践に向けた立派な第一歩である。

                                           弁理士 柴田 浩貴