タイというと何を連想されますか?微笑みの国、美しい女性がワイをして迎えてくれるホスピタリティに溢れたところ。タイ航空の宣伝ですね(笑)。
あるいは、狭い路地にずらりと並ぶ色とりどりの屋台、ナンプラ(魚醤)の臭い。色んな紀行番組で既に取り上げられていますから、読者の皆さんももう良くご存じでしょう。
ところで、このタイにも特許法があり、特許事務所がある、というのは、事業をやっておられる読者の方ならこれも良くご存じでしょう。
東海支部では本年度から標記の委員会を設立して、初年度は主にタイの知的財産(知財)制度について研究しています。
何故タイかって?タイに進出している日系企業は7000社とも言われています。日本人商工会議所に加入している企業だけでも1500社を越え、これは上海についで大きく世界第二位です。さらに我東海地区の主要産業である自動車産業の東南アジアにおける生産拠点、これがタイなのです。
タイにおける特許制度、広く知財制度を研究することは、今後のタイでの事業展開を図ろうとしている企業の皆様にとって他人事ではありませんね。タイで特許とってどうするの、どうなるの?
意匠や商標の方が役に立つの?どうやったら模倣を抑えられるの?等々…。
その研究成果は、来年1月31日(金)の支部設立記念セミナーで大々的に発表しますから、興味のある読者の方は今からご予定ください。
当日は自動車産業のもうひとつの生産拠点としての将来性が買われているインドネシアの知財制度もタイとの比較でご紹介します。お楽しみに。
さて、10月の7日から9日まで、我々の委員会から5人がタイのバンコクへ出かけました。東海支部が協力を要請している当地の特許事務所を訪ねて、これまでの研究での疑問点を明らかにし、ディスカッションするためです。
協力事務所ではこちらの担当に合わせて「特許」「商標」「訴訟」の各メンバーが7日のほぼ一日対応してくれました。インドネシアについては協力事務所の現地支所からバンコクへメンバーを派遣して貰いました。
タイを初め東南アジアの特許事務所のメンバーは欧米への留学経験者が多く、また事務所内でのオフィシャル言語も英語なので(ちなみに協力事務所の所長はフランス人)英語は話すのも書くのも流暢です。日本人は私も含めて一般的に英語は得意ではないので苦労しますが、そんなことも言っておれないのでマンツーマンでディスカッションです。まあ互いに専門分野なので、キーワードを駆使すれば言い方が少々おかしくても分かってくれます。国際派弁理士の誕生ですね(笑)。
2日目の8日は二手に分かれて、一方のグループは裁判所と検察庁へ。ここでも裁判官や検察官と大いに議論を戦わせたとか(私は居合わせなかったので)。他方のグループは、新しいタイの胎動を捉えたい、ということで、チュラロンコン大学のTLO(技術移転機関)を訪ねたり、バイオテクノロジーでの地域産業振興を図るために近年設立されたBioEconomy Academyの説明を受けたりしました。
3日目の9日はバンコク南方にある日系中小企業様を二箇所訪ねて事業の現状等についてお話を伺いました。特許権の成立が遅い等、現状では種々の知財法上の問題はあるものの、実際に日系企業の事業活動はローカルを含む他国企業との競争の渦中にあり、一方ではタイ国内でも自立した技術開発の模索が続いていて、2015年のASEAN域内経済統合を目指して知財法の改正も早晩日程に上ることと思われます。熱い東南アジアから目が離せませんね。
最後に写真を1枚。肖像権の問題で、誰もいない協力事務所の受付の様子だけですが。
日本弁理士会東海支部 東南アジア知財委員会
委員長 弁理士 守田 賢一