東海会の活動について

新聞掲載記事

更新:2013/07/31

「知財価値」について

 「知的財産権」という言葉を皆様は聞いたことがあると思います。特許権、商標権、著作権など、日常生活とは一見無関係そうであっても、実は、日々お付き合いしているものです。皆さんがカラオケを歌うと、JASRAC経由で作曲家・作詞家に、いわゆる印税が支払われます。今夜も錦三では、皆さんの歌声で著作権使用料が動くのです。
 カラオケ以外にも、表紙にミッキーマウスが描かれているか否かでこんなに値段が違っていたりします。
 このノートとレシートのコピーは、筆者が実際に2012年9月5日(水)に、東京の霞が関ビル地下のコンビニで見つけて買ったときのものです。
 表紙以外は同じなのに、普通のノートが157円、ミッキーのノートが399円と、242円も高いのです。
 「えっ!そんなに高いの?」という方、私も同感です。
 ところが、ある大学の授業で二冊のノートを見せ、学生に「普通のノートは150円。ミッキーのノートはいくらだと思う?」と質問し、200円,250円,…,400円と値段を上げながら挙手してもらったところ、なんと、今時の学生は、300円~400円と答えました。普段は「知的所有権なんてちんぷんかんだ」といった授業態度の学生が、なんと、知財に対する相場観は、私なんかよりもずっと高かったのです。
 さて、この様に、私たちは、様々な場面で知財に触れていて、「カラオケ1曲いくら」といわれれば、大体そんなもんだなと感じる様に、実は知財に対するそこそこの相場観を持って生活しているのです。
 上の例以外でも、「夕張メロンは高級だ」「佐藤錦がその値段なら安い」など、物を買うときには、その物の対価の妥当性を何らかの基準で判断しています。
 ところが、「特許権」「商標権」に値段を付けようとすると、皆目検討がつかなくなってしまいます。でも、変ですよね。「夕張メロン」の値段は大体予想できるのに、なぜ、「商標権」の値段は検討がつかないのでしょう。
 実は、「夕張メロン」は、「夕張メロン農家」の皆さんの厳しい品質管理がなされて市場に流通していることをご存知だから、値段の妥当性を判断できるのです。
 「商標権」は、それ自体の価値を考えてもなかなか結論に至りません。「商標権」を大切にし、「よい商品」「まねのできないサービス」を提供し続けることによって価値が増大し、これを怠ると価値が減少し、場合によっては無くなってしまうのです。
 もうずいぶん前の話になりましたが、有名で高級とされていた料理店が「食品偽装」によって信用を失い、結局、みんなが行きたいと思わなくなった例を記憶していると思います。
 「知財価値評価」で一番大切なのは、「知財の価値を計算する」ということではなく、「知財の価値を高める」という姿勢を貫き通すことだと思います。もちろん、私たち弁理士は、依頼を受けて商標権の譲渡価格を計算したりします。しかし、金額を出す方法よりも、知財の価値を高める方法を知り、日々の知財活動をこの目標に向かって邁進することが一番重要なことだと思います。

弁理士 森 泰比古