ライセンス契約とは、例えば、「特許権を持っている者が他人に対してその発明を使ってもよいと承諾する契約」をいいます。ライセンス契約は、「ライセンス」の部分と「契約」の部分からなっていますので、それぞれ知的財産の知識と契約に関する知識の双方が必要になりますし、加えてビジネス・技術に関する知識も必要になります。ライセンス契約も契約の一種ですから、当然に契約全般に関する留意点についても知っておく必要があります。
<契約書の雛形はそのまま使ってはいけません! 相手方が提示してきた契約書に十分に目を通さずに署名・押印してはいけません!>
今まで数多くの契約書に出会ってきましたが、まれに、提示側から、提示側にとって大変不利となる契約が示され驚くことがあります。これは、雛形の内容を全く知らずに使ったためと思われます。契約書の内容はビジネスの内容、力関係などの影響を受けて有利・不利を生ずるため、雛形の使用はほんの参考までに留められることをお勧めします。
<契約の相手方が信頼できるか?>
そもそも契約は信頼関係が前提ですから、信頼できない相手とは契約はできません。また、例え信頼できる相手であっても口約束のまま仕事を進めると、予想し得ない撤回などにより取り返しのつかない損害を受けることがよくありますので、必ず書面にしておいて下さい。
<契約内容が事業目的に合っているか?>
契約内容が、事業計画やビジネスモデルに沿っており事業目的を達成できる内容になっていることが重要です。そのためには、契約締結前には事業計画やビジネスモデルが明確になっている必要があります。ライセンス契約では、自社のコア技術については通常ライセンスしませんし、またライセンスすることによって自社製品と競合するおそれのある製品についてもライセンスしません。
<契約内容が他の契約・権利などとバッティングしていないか?>
ライセンス契約書の内容が、例えばライセンスの性質(独占・非独占)において、他の契約書の内容と矛盾するなどの場合には、後日契約上の問題が発生する原因になります。
<権利・義務の明確化とバランスが重要です!>
権利・義務はその内容があいまいでないことが極めて重要です。例えば、義務が実行できずに多額の損害賠償金を支払うはめになり倒産する例もときどき見かけます。また、極端にバランスの悪い契約は無効とされる可能性がありますし、契約内容もまともに実行されないことにもなりかねません。
<最後に>
契約対応においては(1)どこに問題があるかを見抜けること、(2)自社のビジネスモデルに沿い且つバランスの良い修正ができることなどが重要ですが、先ずは専門家に相談されることをお勧めします。
弁理士 今井 豊