東海支部では、平成16年4月から、教育機関支援機構を設けて、小・中・高校、大学の実施する知的財産に関する教育の支援、出前授業、出前講義を、継続的に実施しております。これらの活動は、我が国の将来を担う子供たちの、知的財産に対する興味を刺激し、知的財産を尊重する風土の醸成の一助たらんとするものであります。
1.小中学校での知的財産授業
(講義形式の授業)
小中学生を対象とする授業の場合には、子供たちにもお馴染の発明王エジソンにちなんで「君も今日からエジソン」というテーマで、身近な発明品(即席麺や新幹線等)を題材とした講義プログラムにより、発明のもたらす恩恵や知的財産制度の意義についてわかり易く説明を行います。エジソンは「私にとって発明は、自然の秘密を解き明かして、それを人間の幸せに役立てること」という言葉を残しております。授業の大きな目的は、このエジソンの精神を子供たちと共有することであります。
(工作授業)
紙コップや乾電池等の簡単な材料を使用して、科学の不思議さや創作の楽しさを体験できる工作を行う授業も行っております。例えば、紙コップと発光ダイオードと回折格子を使って電子万華鏡を作る工作では、一時間弱の授業時間内で、紙コップを張り合わせた筒の中にキラキラと光る美しい万華鏡の世界を作り出すことができます。子供たちは、自分が作った、この電子万華鏡を完成させて、満足し、また、その結果に、大変に喜びます。本機構の知的財産授業における工作は、構造が簡単でありながら先端の科学技術を用いており、科学の不思議さを生徒が体感できるように工夫されております。
(電子紙芝居)
電子紙芝居とは、動物を登場人物とした童話風カラー劇画をスライドにしたものであり、登場人物の発声は、出前授業に参加する4~5名の弁理士がライブで行うものであります。物語は、「犬のレオ君」が一所懸命努力してやっと完成させたいちごジャムパンが村人に好評であったところ、「きつねのシン」が真似をして低価格で販売したために、レオ君のパンが売れなくなる、といった場面から始まります。物語の後半では「特許権」が登場して、レオ君の新しい発明品(カレーパン)が守られていく様子が説明されます。この物語を通して、一所懸命努力してやっと完成させた独創性あるものを模倣されてしまうレオ君の抱く悲しみを、子供たちに共有してもらいます。これにより、独創性のあるものを尊重する精神を学んでくれればと考えています。紙芝居終了後に子供たちに質問をすると、知的財産権の基礎知識がきちんと身についていることに関心させられます。
2.高校での知的財産授業
高校生を対象とする授業では、「アイデアを出し合う、日常生活や学習体験の中で生まれたひらめきを形にする」「様々な実習活動を通じて発想や創造の喜びを体験する」「それらの発想や工夫改善に必要なスキルを身につける」「さらに産業やビジネス、また地域を学びながら商品企画や商品開発、ものづくりを行い、それらを通じて知的財産に関するモラルやマインドを習得する」などのコンセプトの下で、各学校ごとに様々な要望に応じた授業を展開しております。授業は、「日常困っていることの解決策を考え、アイデアを出し合う・商品企画でパッケージデザインやネーミングを考える」「地域産品のブランド化を考える」「地域の産品を使って企業と連携して商品開発を行う」など、生徒の興味を促しつつ、知的財産制度の基礎知識を習得できるものとなっております。
3.大学・一般向けの知的財産授業
大学生を対象とした授業として、平成22年度から名古屋市立大学芸術工学部デザイン情報学科の専門科目「デザイン情報関連法規」を本機構で担当させて頂いております。講義内容は、実務に精通した専門家による16回の講義により、特許法・意匠法・商標法・不正競争防止法・著作権法・その他外国法や知財紛争までを網羅するものとなっております。このうち、知財紛争は、「おにぎりパック事件」というタイトルで劇を行うものであります。この紛争劇は、大学以外の一般向けセミナーでも度々実施されており、大変好評を博しております。
以上、各知的財産授業に興味をお持ちの方は、日本弁理士会東海支部までお問合せ下さい。
日本弁理士会東海支部 教育機関支援機構
前副機構長 弁理士 関根 由布