東海会の活動について

新聞掲載記事

更新:2011/02/28

知的財産セミナー2011報告

 去る1月28日(金)、ヒルトン名古屋にて、日本弁理士会東海支部の開設を記念して、知的財産セミナー2011が開催されました。
 本年のセミナーでは、「企業競争力強化のための知的財産、デザイン&ブランド活用法」をテーマとして掲げ、講演1では、ベル特許事務所代表の弁理士の嶋宣之氏によって、「中小企業の収益向上のための知財活用戦略」との演題に基づき、会社の競争力に繋げる特許力の活かし方として、1.営業支援が特許力を活かす唯一の道、2.事業形態に応じた特許力の活用法、の2章の内容に分かれて行われました。その中で、要塞作戦のイメージは特許が営業の後方支援であり、盾&剣作戦のイメージは前線での戦いであり、要塞作戦あるいは盾&剣作戦は人に見えないことが特徴であること、事業形態に応じた特許力の活用が大切であり、商品の差別化要素は見込み形態の事業と受注形態の事業とでは相違し、特許力を発揮させる場面が異なることなどの講演がされました。販売力のあるところに特許が有効に働く、中小企業はテーマを絞って特許出願を出すことが必要であるとの講演は非常に興味深いものでした。
 講演2では、「中小企業の企業競争力強化のためのブランド&デザイン活用法」との演題に基づき、第1部では、株式会社ビートップツー取締役の木全賢氏によって、「ブランド導入の必要性と導入事例紹介」と題して、認知科学に基づくブランドコミュニケーションの基礎知識が講演されました。21世紀は「デザイン的発想の時代」であり、デザインはコミュニケーションツールであり、人の共感を呼ぶ物語は、旅立ち、困難、帰還のストーリーから構成されることなどが講演されました。BtoBビジネスでの具体的なブランド導入事例として、目標、物語の具体化、見せ方、全体像、老舗などをキーワードに、東京の吉永機械株式会社の事例を挙げて講演がされ、ブランド導入により社員のモチベーションが高まったとの説明は非常に興味深いものでした。
第2部では、有限会社ネオデザイン代表の井上和世氏によって、「デザイン導入の必要性と導入事例紹介」と題して、機械も職人もいない大阪の文具アセンブリメーカー林製作所が町工場のネットワークを生かし、デザイナーと二人三脚でオリジナル製品を開発した事例が紹介されました。社長交代をきっかけにデザインを導入し、アスクルとの出会いを転換期として、OEMから脱却することで従業員の意識も変わり、オフィスの間仕切り部材に関する特許を取得したことを契機とし、他企業との連携により、オフィスアクセサリーメーカーからも脱却した事例は非常に興味深いものでした。
 第3部では、木全賢氏と井上和世氏によって、「BtoC(企業と一般消費者との取引)ビジネスでのブランド&デザイン導入事例紹介」と題して、生産機械メーカーが洗顔石鹸や理容用品のネット事業を立ち上げた際の、講師二人がかかわった事例が紹介されました。東京都大田区の化粧品メーカーのジェイオー・コスメティックの社長の「想い」、電動爪削りを考えた発明者の「想い」、「新しいことをしなければ」と考えた三信精機の渡辺社長の「想い」をブランドは伝え、デザインは「想い」を「形」にするもので、デザイナーはそのきっかけを作る者であるとの講演は非常に興味深いものでした。
 各講演の後は、講師と参加者との間で質疑が行われ、参加者の熱意が伺われるものとなりました。
 例年、知的財産セミナーは、非常な好評を博しており、今年は約470名を超える参加申し込みがありました。当日のセミナーは、5階の「扇の間」を借り切って開催され、約400名の参加者がありました。惜しくも、今年の知的財産記念セミナーに参加できなかった方におかれましても、是非、来年1月27日開催予定の知的財産セミナーに参加して戴けるようお願い申し上げます。本年の12月頃には、日本弁理士会東海支部のホームページ等にて、次回の知的財産セミナーの情報が掲載される予定となっておりますので、確認をして頂ければ幸甚です。

日本弁理士会東海支部 副支部長 弁理士 尾崎 隆弘

講演する嶋氏 講演する嶋氏