東海会の活動について

新聞掲載記事

更新:2009/08/31

元気のいい中小企業紹介★1★

(1)はじめに

 本年度の日本弁理士会東海支部の活動の大きな柱として中小企業支援活動があります。昨今の厳しい経済環境の中、現状打破のため、中小企業こそ「何か新しい取り組み」をしなければなりません。
 私たちは、「元気のいい」中小企業経営者の皆様に、今現在「元気がいい」原因となったその企業における「過去の取り組み」についてお話を伺っています。元気の原因となった過去の取り組みに普遍性があれば、その普遍性こそ、中小企業経営者が現在行うべき新しい取り組みのヒントになると考えたからです。
 このことは、既に経営専門家によって分析されていることでしょうから、その分析結果を知識として得ることはできるでしょう。しかしながら、中小企業の新しい取り組みを支援させていただこうとする場合、中小企業経営者と弁理士との間で、その取り組みに関する「実感」の共有ができていないと、何事も机上の空論に過ぎず、現場感覚から離れてしまいます。ともすれば私たち弁理士は、中小企業の取り組みが結果(発明)を生んだ段階から関わることとなりますので、結果を見ての評論家になりかねません。

 そこで、多くの中小企業経営者の皆様から生の声をお聞きして、元気を生んだ過去の取り組みをご紹介させていただくとともに、支援活動のベースとなる現場感覚を養おうと考えています。
 今までの中小企業インタビュー結果から、中小企業の採るべき「取り組み」は『後発メーカに徹すること』と一応の結論付けをしています。いわゆるローリスク-ローリターン戦術です。現在の経済環境ではこれこそ現実的な戦術と考えます。
 これから紹介する「元気のいい中小企業」もこの後発メーカとしての観点から紹介させていただきます。ただ、強調させていただきたいのは、元気のいい中小企業の皆様は、後発メーカであっても、先発メーカが見落としていた新たなニーズを見つけ出し、そのニーズに適応した商品を積極的に提供されています。このニーズを見つけることこそ中小企業経営者の個性であり他者が関与できるものではありません。
 今後紹介してきます元気のいい中小企業の過去の取り組みが、中小企業経営者の皆様方にとって、新しくみつけたニーズに対応する事業をいかに実現するかのヒントになれば幸甚です。
 次月には、知的財産の観点から、後発メーカとして注意すべきこと、また新しく見つけたニーズの筋の良し悪しについての判定法につき紹介する予定です。

(2)元気のいい中小企業紹介★1★-千代田電子工業株式会社-

 千代田電子工業(株)の本業は電子機器用のハーネスです。本業の業績は堅調であったのですが、将来的にハーネス以外にも社業の柱が必要と考え10年まえから色々な開発にトライされました。
 最初は、ハーネスに関連する分野、例えば結束工具などの開発を手がけましたが、関連する分野とはいえハーネスと全く異なる技術をゼロから必要とします。どうせゼロから出発するのなら、一番難しい新規市場で新しい技術である測定器の分野へ進出しようということになりました。ただ、会社としては新規分野ですが、電子機器メーカの技術者が迎え入れられていますので、測定器に対応する人的ポテンシャルはありました。
 果実の測定器に狙いを定めたのは千代田電子工業(株)が東三河に在社することに関連がありました。渥美半島はメロン等果実の一大生産地です。果実の品質管理の点から非破壊による糖度の測定が生産農家や流通過程で必要不可欠になるとの考えです。非破壊型の糖度計は既に他メーカから販売されていましたが、他メーカの装置は専ら大学・研究機関・試験場で使用され、その価格も100万円越えでした。他メーカの糖度計では糖度測定の原理を高価な分光器により実行しており、この分光器が糖度計の価格を下げるネックとなっていました。
 このような高価な糖度計は生産農家の現場向きではありませんので、そこにチャンス(新たなニーズ)を見いだしました。生産農家に使ってもらうためには、糖度計をコンパクトにし、かつ価格も大幅に引き下げる必要があります。
 そこで、千代田電子工業(株)は地元の豊橋技術科学大学の技術に目をつけ、技術導入及び共同開発という途をとりました。本糖度計では果実に光を透過して拡散した光をフィルタに通してセンサで検出するといものであり、分光器を用いるタイプに比べて大幅な低価格化とコンパクト化を可能にします。
 更に、千代田電子工業(株)の測定器では、短時間(0.5秒)での測定が可能となります。これにより、コンベアを流れる果実の選別にも利用できます。ちなみに、他メーカタイプでは測定に1.5~15秒を要しますので、連続的な選別には不向きです。
 測定器の開発にあたり、先行特許文献の調査をしています。また、開発する技術につき、大学からのライセンス形式をとっていますが、特許の備えも万全です。

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千代田電子工業株式会社
〒442-8511 愛知県豊川市穂ノ原三丁目14-4
TEL:0538-84-3111 FAX:0538-84-3117
HP:http://www.chiyoda-denshi.co.jp/
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日本弁理士会東海支部 知的財産支援委員会
副委員長 弁理士 小西 富雅

豊橋技術科学大学との共同研究の様子 豊橋技術科学大学との共同研究の様子

コンパクトな最新の測定器 コンパクトな最新の測定器