従来、大学は真理を探究する場であり、そのために研究を行い、その成果を研究論文として発表することに力が注がれてきました。しかし、大学での研究から、新たな技術的アイデア(発明)が生み出されることもあります。こうした大学発明は、基本的な技術である場合が多く、実用化された場合に産業界に大きなインパクトを与える可能性を秘めています。このため、大学発明を積極的に知的財産権として保護し、その活用を図ろうという動きが活発化しています。
2002年に制定された知的財産基本法には、大学発の知的財産の活用が規定され、大学から民間企業への技術移転や、産学官の連携的な共同研究も積極的に行われようとしています。大学発明は企業によって実施化され、それによる利益を大学に還元し、さらにその還元されたお金で研究を行い、新たな発明を生み出すという、知的創造サイクルの活性化が図られています。
ところで、大学の先生がなした発明について、誰が特許を受けることができるのでしょうか。その先生でしょうか?それとも大学でしょうか?特許法上では、発明者が特許を受けることができるとされています。このため、原則的には、その発明を創作した先生が、その発明についての特許を受ける権利を有していることになります。従来は、大学の先生が個人で出願したり、特許を受ける権利を企業に譲渡し、その企業が出願したりすることが多かったと思われます。
しかし、このように知的財産の管理が発明者自身に委ねられた場合には、大学として統一した知的財産戦略のもとに知的財産管理を行うことができませんし、発明者自身の負担も大きくなります。このため、最近では、特許を受ける権利を創作者である先生から大学へ譲渡し、大学の知的財産部門が知的財産を一元管理し、これを有効に活用していこうという方向に向かいつつあります。
一方、発明を創作した大学の先生は、大学の職務発明規定に基づいて、大学から報奨金や実施化による手数料の一部を受け取ったりすることができます。こうして、発明創作のインセンティブを高めることにより、大学から多くの発明が創作され、その技術が民間企業に積極的に技術移転され、新たな産業を創出していくことが求められています。
弁理士 青山 陽