東海会の活動について

新聞掲載記事

更新:2010/03/31

元気のいい中小企業紹介★8★

(1)はじめに

 日本弁理士会東海支部では、中小企業経営者の皆様にとって現状打開の一助になればと考え、一年間にわたり、「元気のいい」中小企業を紹介してまいりました。最後に紹介します企業はカテーテル治療のシミュレータを提供する有限会社ファインバイオメディカルです。

(2)元気のいい中小企業紹介★8★-有限会社ファインバイオメディカル-

・医工連携の成果
 医療関係研究者と工学関係研究者との20年間に及ぶ共同研究の成果として人体の血管をリアルに再現する血管モデルの提供が可能となりました。この技術では、人体を被写体として実際に撮影したX線CTやMRIデータから三次元画像を構成し、三次元画像から血管内の空洞部分を抽出してこれを積層造形します。積層造形した血管の空洞部分(雄型)を人体組織に近い特性をもつ材料で被覆し、その後雄型を取り除きます。これにより、任意の血管(脳血管など)を100分の1ミリ単位で精密に再現可能となりました。
 このようにして精密につくられた血管をマネキンへ組み込むことで、血管に対するカテーテル治療のシミュレータ(EVE)が完成しました。
 カテーテルによる血管治療は人体に優しい手術方法として注目されていますが、その手術には高度なテクニックと経験が要求されます。しかしながら、これまでカテーテル治療の訓練を受ける環境は充分に整備されていませんでした。有限会社ファイババイオメディカルが提供するEVEは下記の5つの特徴を有し、お医者様に充分な訓練を積んでもらうための真に有用なシミュレータとして注目を集めています。

・EVEの5つの特徴
(1)任意の血管を再現できますので、全身の血管に対する治療のシミュレーションが可能となります。このときEVEは透明ですので、カテーテルの動作及びそれに伴う血管の変形を目視により確認できます。
(2)血管モデルの材料を選択することにより血管の物理特性を多角的に再現できる結果、カテーテル挿入時の血管変形、カテーテルの操作感/挙動がリアルに再現されます。
(3)約3.8kgの軽量構造であり持ち運びが可能です。
(4)血管モデル内へ疑似血液を循環させられますので、より現実に近い環境でシミュレーションできます。
(5)実際のカテーテル手術で使用する透視装置(DSA)に完全対応しますので、透視映像と実物とを見合せることで術中のカテーテルの挙動や血管の変形を深く理解できます。
 下記の写真は、日本脳神経血管内治療学会の専門医師試験におけるEVEの使用例です。

 同社池田誠一社長(下記写真左側)は学生の頃から主体的に精密な血管モデルの研究に携わっており、その結果、いわゆる大学発ベンチャーとして自ら起業されました。
 大学の研究結果が市場の製品として受け入れられるまでに、一般的には、相当な時間を要しますが、同社の製品EVEには発表当初から引き合いがきました。これは、当初からEVEの完成度が高く、またそのためカテーテルシミュレータとしての潜在的な需要を掘り起こしたからと考えられます。
 有限会社ファインバイオメディカルの基本技術に関する特許は自社で保有しておりますが、関連技術に関しましては大学特許の利用となります。この大学特許は池田社長が大学に属するときに成したものですので、大学保有といえども、会社として優先的に利用できる環境です。また、費用のかかる外国出願につきましても中部TLOや大学がJSTの補助金を利用して出願し、会社がそれを利用できる環境を整えています。

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有限会社ファインバイオメディカル
〒464-0858 愛知県名古屋市千種区千種2-22-8
医工連携インキュベータ4階404号室
TEL:052-387-6520
HP:http://www.fain-biomedical.com
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日本弁理士会東海支部 知的財産支援委員会
副委員長 弁理士 小西 富雅

(元気のいい中小企業紹介:おわり)

EVE EVE

日本脳神経血管内治療学会の専門医師試験におけるEVEの使用例 日本脳神経血管内治療学会の専門医師試験におけるEVEの使用例