去る1月29日(金)、ヒルトン名古屋にて、日本弁理士会東海支部の開設を記念して、知的財産セミナー2010が開催されました。
本年のセミナーでは、「トヨタ自動車のハイブリッドカーに代表される ~環境技術とその知的財産戦略、元気な中小企業の経営戦略~」をテーマとして掲げ、第1部の基調講演、並びに第2部及び第3部の特別講演が行われました。
第1部の基調講演では、トヨタ自動車株式会社の小木曽聡氏によって、「トヨタハイブリッドカー「プリウス」の開発とその将来について」との演題の基づき、初代プリウスが誕生するまでの開発秘話、2代目プリウスの商品コンセプトと進化、3代目プリウスの役割と商品要件などについての講演が行われました。実際に商品開発に携わって来た小木曽氏の講演は、あたかもプロジェクトXを観ているかのようであり、目標設定に合わせた技術開発、個別に発生する問題を解決するまでの経過、ハイブリッドシステムの進化などに関する内容が盛り込まれており、非常に興味深いものでした。
また、第2部の特別講演では、トヨタ自動車株式会社の佐々木剛史氏によって、「トヨタの環境技術における知的財産戦略について」との演題に基づき、1.環境・エネルギー問題への対応、2.知的財産を取り巻く環境、3.トヨタ知的財産活動の紹介、4.環境技術における具体的活動の4章の内容に分かれて行われました。第1章では、世界のエネルギー需要と二酸化炭素の発生量予測、世界人口と自動車保有台数に対する予測、今後必要になると予想される商品の概念などが、第2章では、知財価値が国際的に高まっているという状況などが、第3章では、トヨタ自動車の生い立ちと、知財戦略と経営・技術戦略を一体として活かす考え方などが、第4章では、ハイブリッド技術に関する特許出願状況などが、それぞれ説明されました。
第3部の特別講演では、愛知学院大学教授の岩田憲明氏によって、「東海地域における元気な中小企業の紹介」との演題に基づき、I.東海地域の経済の特徴、II.元気な東海地域の企業、III.不況に負けない企業経営の3章の内容に分けて行われました。第I章では、東海地域が人口1000万人の豊かな市場であり、ヒト・モノ・カネ・情報の入手が容易な地域であること、厳しい競争環境にあること、及び大学・公設試験所などの支援機関が存在し人脈の活用が行いやすい状況にあること等の特徴があることが説明されました。また、第II及びIII章では、個別の企業が、過去の不況を乗り切るために如何なる商品開発を行って成功したか、或いは現在の不況に対応するためにどのような取り組みを行っているかなどについて、様々な事例が紹介されました。
各講演の後には、講師と参加者との間で質疑応答も行われ、参加者の熱意が伺われるものとなりました。また、講演後には、各講師に対して名刺交換を求める参加者も多く、参加者の期待が高いことがわかりました。
例年、知的財産セミナーは非常な好評を博しており、今年は600名を超える参加申し込みがありました。当日のセミナーは、5階の大宴会場を借り切って開催され、約500名の参加者がありました。惜しくも、今年の知的財産記念セミナーに参加できなかった方におかれましても、是非、来年には知的財産セミナーに参加して戴けるようお願い申し上げます。本年の12月頃には、日本弁理士会東海支部のホームページ等にて、次回の知的財産セミナーの情報が掲載される予定となっておりますので、確認をして頂ければ幸甚です。
日本弁理士会東海支部 副支部長
弁理士 小林 洋平