東海会の活動について

新聞掲載記事

更新:2009/12/28

日本知的財産仲裁センターについて

1.こんなケースありませんか?

 「我が社が特許を取った製品と同じ製品が販売されていることを展示会で知り、急きょ特許権侵害である旨を相手方に伝えましたが、相手からは何の回答もありません。」
 「先日、ホームページで我が社の商品を検索していたところ、我が社の登録商標と同じ商標を使用した商品を発見し、FAXで使用を中止して欲しいと要求しましたが、未だに状況は変わりません。」
 こうしたケースのように、こちらが権利者側であるとは限りません。権利侵害であると主張された側に立つ場合もあるのです。これらのご相談を受ければ、どちらの側に立つにせよ、侵害の成否や裁判での見通し、裁判費用等をご説明することとなります。このとき、殆どの方は先ず、費用の点で難色を示します。
 しかし、(実を言いますと)難色を示す理由は、費用の点ばかりではありません。相手方の応戦により、裁判の行方は必ずしも明確ではない場合が多いのです。とりわけ特許裁判では、特許が無効である旨を主張されるケースが近年多く、全く予断を許しません。商標権侵害のケースであっても、相手方はこちらの出願以前から使用している場合もあり、権利者は最終的に敗訴するケースもあるのです。
 権利侵害と主張された側にしても、提訴されたことが業界に知られてしまうことを心配する経営者の方もおられます。しかも、正式な裁判手続は、「判決」で終了することが基本ですから、負けた場合はもちろん、勝った場合であっても、“後味が良い”とは必ずしも言えません。裁判は、“止むを得ず”といった場合に採る最終的な手段であると考えるのが普通ではないでしょうか。
 では、裁判に変わる紛争解決策はあるのでしょうか?

2.裁判外の紛争解決手段

 今回、この紙面でご説明するのは、日本弁理士会と日本弁護士連合会とにより設立した「日本知的財産仲裁センター」が行う「調停」です。私も「調停人」として、何回かは調停事件に携わった経験がありますが、その私も、「調停」による解決は十分意味があるものと思っています。なぜなら、
 (1)費用が安い、(2)時間が短い、(3)全てが秘密である、
 (4)双方の納得できる柔軟な解決策を模索する、
 (5)和解できない場合はいつでも手続を中止できる、
 (6)名古屋でできる、(7)厳格な手続は不要である、というメリットがあるからです。

3.調停手続の順序

 手続の順序は次の通りです。実際に知的財産に関するトラブルが発生した当事者は、権利者側でも警告等を受けた側でもいずれでも調停の申立をすることができます。申立を受けた仲裁センター(名古屋支部)は、その申立書を相手側に送り、調停に応じるか問い合わせて、相手側が応諾したときに調停が開始されます。
 調停は原則、弁護士1人、弁理士1人の合計2人の調停人により行われ、原則1~3回程度の調停期日に双方が集まり、話し合いが行われ、調停人も意見を述べつつ話し合いを進行させます。調停は、双方が合意すれば和解契約を結び終了します。しかし、調停はあくまで当事者の合意がなければ成立しませんので、合意に至らなければ調停は不成立となり、終了します。しかしながら、調停の内容、成立したこと、不成立になったこと等は秘密が守られます。

4.その他

 裁判外での紛争解決手段には、上記「調停」ばかりではなく、「仲裁」もあります。この「仲裁」は、当事者の合意により申立することができます。仲裁の結論は当事者を拘束して、裁判所の確定判決と同じ効力を持ちます。なお、仲裁センターでは、具体的な紛争の事案について、有料(1時間まで1万5百円)で相談業務を行っています。トラブルが発生し、専門家がわからない、調停、仲裁、判定を申し立てるかどうか迷っているときは、ご利用ください。

日本知的財産仲裁センター
ホームページ:http://www.ip-adr.gr.jp/
名古屋支部(受付・相談窓口)
《三の丸分室(愛知県弁護士会)》 TEL.052-203-1651
《伏見分室(日本弁理士会東海支部)》TEL.052-211-2051

日本知的財産仲裁センター名古屋支部
副運営委員長 弁理士 稲葉 民安

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