東海会の活動について

新聞掲載記事

更新:2009/05/14

ブランド(商標)との付き合い方 ~トラブルに巻き込まれないために

1 ブランド名は大抵商標登録がなされており、商標権で守られています。ですので、ブランド名そのものを無断で使用することは商標権侵害になりますし、また、ブランド名と「類似する」名称を利用することも商標権侵害になります。

2 商標権侵害を行った場合には、権利を有する者から、使用差止、損害賠償、信用回復措置等を請求されます。また、刑事罰が科せられることもあります。

3 では、他人の商標と自分が利用した標章とが「類似する」かどうかは、どのようにして判断するのでしょうか?
実際の裁判等では、(1)外観(見た目)、(2)観念(意味)、(3)称呼(発音)が同一または類似しているかどうかにより判断します。
もっとも、実際の裁判等では、例えば、(1)「SINGLE」と「SINGER」では外観が似ていると判断され、(2)「セサミ工房」と「ごま工房」は観念が似ているが、「シェフハット」と「シェフの帽子」は似ていない、(3)「ラミマックス」と「ラミパックス」は称呼が似ているが、「セリア」と「ゼリア」は音が似ていない等といった判断がなされており、さらに、「腰人防」と「用心ボー」では音は全く同じですが類似していないと判断されるなど、なかなか分かり難い部分があります。
 さらに、「大森林」と「木林森」の場合では、東京地裁と東京高裁はいずれも、両者は(1)外観(2)観念(3)称呼のいずれも似ていないから類似しないと判断しましたが、最高裁は、「取引の実情」(どちらも育毛剤としてドラッグストアで販売されていました)を考慮すれば両者は紛らわしいとして、類似であると判断しました。
 このように、類似か否かの判断は専門家でも困難な部分がありますので、警告状が来ても、慌てずに弁理士に相談した方がよいでしょう。

4 では、他人の商標を適法に使うにはどうすればいいでしょうか?
一つの方法は使用許諾を受けることであり、もう一つの方法は商標権を譲り受けることです。いずれにしても、自分にその商標を使う権利があることを他人に主張するためには特許庁への登録手続きが必要になるので、弁理士にご相談ください。

5 また、他人の商標と類似する名前を使っていても、商標権侵害にならないこともあります。たとえば、自己の名称等を使う場合(例えば、有限会社東天紅が「東天紅」と自社名を表示する場合)真正商品の並行輸入、原材料表示(例えば、調味料の表示に「タカラ本みりん入り」と表示する場合)どです。ですので、万が一、ある日突然商標権者から警告状が届いても、上記のような商標権侵害に当たらない場合であることもあるので、慌てずに弁理士に相談してみてください。

6 なお、いわゆる偽ブランド商品の個人輸入については、現在、取締りを強化する方向での法改正が検討されていますので、くれぐれも偽ブランド品の購入はしないようにしてください。


弁護士・弁理士 高橋 恭司