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新聞掲載記事

更新:2009/03/13

警告状が来たらどうするか(危機管理は充分ですか)

 いきなり次のような警告状が舞込んできたらあなたはどうしますか。

「貴社の製品Eは、当社の所有する特許権(特許第0000号)の技術的範囲に含まれると思料いたします。貴社の製品(00)の販売を中止し、今までの販売数量及び販売金額をご連絡いただくよう通知いたします。本件につきまして貴社のご見解及び対応を至急ご連絡ください。00株式会社 代表取締役00」

 これは物を製造販売している会社にとって常に起きる可能性のある事態です。その対応(危機管理)のポイントについて簡単に説明します。

1.専門家にすぐ相談する。
 知的財産権の専門部署を持っている大企業はともかくとして、そうでない会社は、専門家(弁理士、弁護士)にまず相談してください。軽く考えたり、勝手に判断したりすると大変困った事態になりかねません。

2.対応内容
 専門家に相談することは必須ですが、その対応は、大きく分けて3つの分野について、以下のことをします。

2-1 対象製品の調査
 まず、警告の対象となった製品について、対象特許の成立日以降の売上高、利益額等を調査します。これにより最悪の場合(損害賠償の支払い、製造販売の中止等)の危機の大きさが理解でき、どの程度の経営資源(人、金)を投入するか判断できます。さらに、対象製品以外の類似製品についても調査しておきます。今後、問題となる可能性があるか検討するためです。

2-2 警告相手先の調査
 相手が競合先か、未知の会社かいずれにおいても、相手の目的は、製品の販売を止めたいのか、ライセンスして実施料が欲しいのか、クロスライセンスを狙っているのか等の予想をします。
 自分の特許権を持っている場合には、相手の製品についても調査して、相手にカウンターの警告ができないか調査します。(日頃、重要技術について特許出願しておくことが大切です。)

2-3 対象特許権の調査
 特に、対象特許権の調査は、専門家である弁理士と相談が必要です。警告の対象となった相手の特許権について、特許権が有効に存続しているか調査します。これは、特許権を維持するために毎年、維持年金を支払う必要があり、支払わないと失効するからです。さらに、警告者は、その特許権の正当な所有者であるかも調査します。無権利者が警告することはままあります。
 次に、対象特許権の権利範囲に対象製品が含まれるか検討します。特許権に含まれるかどうかは、簡単な話ではありません。対象製品が対象特許権に含まれるかどうかについては、大変多くのことを検討する必要があります。弁理士が専門的知識を使って検討する重要なポイントです。
 それには、特許権の特許公報と特許庁における審査経過書類のコピーを取り寄せ、中味を充分検討します。さらに、特許権が出願された日の以前の技術資料(先行技術)を調査します。この先行技術は、特許権の権利の範囲を確認する上で重要な判断材料になるとともに、次の特許の有効性の判断の資料となります。
 さらに、対象特許権の有効性について検討します。特許権は特許庁の審査官が審査して、権利を付与していますが、審査官は、大変多くの件数を審査しています。したがって、あらゆる技術文献を調査することは不可能であり、一定範囲の資料の調査で判断せざるを得ません。
 そのため、一旦特許になっても、先の先行技術が見つかると、この無効を主張することができるのです。審査官の調査よりももっと広範囲に先行技術を調査し、可能な場合は、この特許を無効にすることも対応の1つです。

2-4 特許権侵害の対応
 特許権が無効であると判断したり、特許権に含まれないと判断したりし他場合には、まず、相手と話し合うことが大切です。弁理士の鑑定書を提示することも有効ですし、相談した弁理士も立ち会うことが有効です。相手が納得しなければ、裁判あるいは調停を行うことになりますが、この場合は弁護士、侵害訴訟代理を認められた弁理士は弁護士と共同して行います。しかし、あくまで、話し合いで解決することが経済的にも得です。
 また、特許を無効にできなくて、特許権に含まれることになった場合の対応は次の3つのいずれかです。

①対象製品の販売を中止して、今まで販売した分の損害賠償を支払う。
②相手と交渉して特許権の実施権の許諾を受ける。この場合は、もちろん相手の同意(有料又は他の条件)が必要です。
③対象製品の設計変更をして、特許権に含まれない製品を販売する。過去の販売分の損害賠償は支払う。

 このように、警告状が来た場合には専門的な、複雑な対応が必要です。ぜひ素早く専門家である弁理士にご相談ください。


弁理士 糟谷 敬彦