東海会の活動について

新聞掲載記事

更新:2008/12/16

知的財産仲裁センターの活動について

~知的財産の紛争は知的財産仲裁センターを利用しよう!~


1.日本知的財産仲裁センターについて
 日本知的財産仲裁センター(以下、「仲裁センター」)は日本弁理士会と日本弁護士連合会により設立された、裁判外で知的財産の紛争を解決する機関です。この仲裁センターは、弁護士と弁理士が共同で知的財産に関する紛争の解決に当たります。仲裁センターの主な業務は「相談」、「調停」、「判定」があります。
 日本知的財産仲裁センター名古屋支部の活動について、今回は主に「調停」について説明します。

2、知的財産実務シンポジウムが開催
 知的財産の紛争が起きたときにまず考えるのは裁判ですが、裁判以外にも紛争を解決することができる機関があります。それが仲裁センターです。この仲裁センターの活動について広く皆様に知っていただくために、過日名古屋商工会議所、日本弁理士会東海支部、愛知県弁護士会の主催で「知的財産実務シンポジウム」が開催されました。
 シンポジウムでは、仲裁センターの概要の説明の後、模擬「調停」の上演がなされました。これは、愛知県弁護士会所属の弁護士と日本弁理士会所属の弁理士が出演者となり、迫真の演技で調停の実態を聴衆に示しました。テーマとして「買い物かご」に関する特許紛争について、実際の調停の進行と、権利者側と警告を受けた側がどんな対応をするか(弁理士、弁護士との相談を含む)演技により見せました。

3.仲裁センターの調停について
 その調停とはどんなものでしょうか。仲裁の流れは次の図の通りです。
 実際に知的財産に関するトラブルが発生した当事者は、権利者側でも警告等を受けた側でもいずれでも調停の申立をすることができます。申立を受けた仲裁センター(名古屋支部)は、その申立書を相手側に送り、調停に応じるか問い合わせて、相手側が応諾したときに調停が開始されます。調停は原則、弁護士1人、弁理士1人の合計2人の調停人により行われ、原則1~3回程度の調停期日に双方が集まり、話し合いが行われ、調停人も意見を述べつつ話し合いを進行させます。
 調停は、双方が合意すれば和解契約を結び終了します。しかし、調停はあくまで当事者の合意がなければ成立しませんので、合意に至らなければ調停は不成立となり、終了します。しかしながら、調停の内容、成立したこと、不成立になったこと等は秘密が守られます。

4.仲裁センターの仲裁の特徴
 仲裁センターの仲裁は、裁判と比べて、次のような特徴があり、柔軟で早い解決を図ることができます。

・地元名古屋でできる。
(特許等の裁判は、東京地裁又は大阪地裁でしか訴えることができませんが、仲裁センターの仲裁は名古屋支部でできます。従って、時間も交通費も節約できます。)
・解決が早い。(原則として6ヶ月以内)
・費用が安い。
(申立手数料、5万円、一回毎の期日手数料が5万円(双方)、和解成立時の費用15万円(双方))
・秘密が守られる。
(裁判では公開の法廷で行われることが原則ですが、仲裁、調停、判定のすべてが非公開ですので、企業の秘密や、他人に知られたくない案件に適しています。)
・双方が納得できる解決が得られる。
(裁判では、白か黒か決めなければなりませんが、調停では双方が歩み寄って納得できる灰色の解決が可能であり、柔軟な解決が可能です。)
・手続が自由です。
(裁判では法令に従った厳格な手続の下で進行しますが、調停では話し合いにより柔軟に進めることができます。調停による解決を望まなくなった場合にはいつでも、調停から降りることができます。)
・原則として、弁護士1人、弁理士1人の合計2人の仲裁人で進め、当事者双方の合意に基づき進めます。

5.仲裁
 仲裁は、当事者の合意により申立することができます。仲裁の結論は当事者を拘束して、裁判所の確定判決と同じ効力を持ちます。

6.相談
 具体的な紛争の事案について、有料(1時間まで1万5百円)で相談業務を行っています。トラブルが発生し、専門家がわからない、調停、仲裁、判定を申し立てるかどうか迷っているときは、ご利用ください。

日本知的財産仲裁センター
ホームページ:http://www.ip-adr.gr.jp/

名古屋支部(受付・相談窓口)
《三の丸分室(愛知県弁護士会)》 TEL.052-203-1651
《伏見分室(日本弁理士会東海支部)》TEL.052-211-2051


日本知的財産仲裁センター名古屋支部 運営委員
日本弁理士会東海支部 副支部長 弁理士 糟谷 敬彦