東海会の活動について

新聞掲載記事

更新:2008/11/22

意匠ってなに-意匠法における保護対象-

 意匠とは、物品の形態(形状、模様、色彩など)についてのデザインのことです。
 デザインと言うと、「何か趣向を凝らしたおしゃれなもの」というようなイメージをお持ちになるかもしれませんが、敷居は決して高くありません。高尚な美感でなくとも、何らかの美感を起こすようなデザインであれば、意匠法において保護対象となり得ます。例えば、ネジや釘などの形状も立派なデザインです。
 但し、意匠法で保護を受けるためには、物品の形態、すなわちデザインが肉眼で認識できるものでなくてはなりません。例えば、塩・砂糖の一粒子、物質の分子構造など肉眼で認識できないものは保護対象とはなりません。

 ここで、物品として認められるには有体物である必要があり、例えば、電気、光、熱、音などの無体物は物品として認められません。したがって、例えば打ち上げられて上空で開いた花火の形状、模様、色彩などは物品の形態とは言えず、意匠法では保護できません。尚、「花火玉」は物品であり、保護対象となり得ます。有体物であっても、気体や液体など特定の形態を有していないものや、土地建物などの不動産は、保護対象外です。
 また、工業的(機械的、手工業的)に量産可能でないものは意匠法では保護されません。例えば、絵画、彫刻など一品物としての純粋芸術品や、自然物である植木などは保護対象外となります。尚、純粋芸術品は著作権による保護が可能です。
 絵画そのものは意匠法で保護されないとしても、例えば絵画を模様として付した量産可能なコップなどに係るデザインは意匠法での保護が可能です。また、彫刻であっても、例えば「置物」や「おもちゃ」の類として工業的に量産可能なものであれば、そのデザインは意匠法での保護が可能です。

 さて、ここで一つ問題です。衛星放送などを受信するパラボナアンテナ(具体的に、パラボナアンテナ用反射鏡)の形態は意匠(デザイン)として保護できるでしょうか(尚、新規性などの問題はここでは除外します)。パラボナアンテナ自体は「視認可能」な「物品」と言え、何らかの「美感」を起こすとも言えそうです。
 また、「工業的に量産可能」なものですが、はてさて。。。答えはNOです。理由は次の通りです。
 パラボナアンテナ用反射鏡は、電波の送受信機能を確保するために必然的にその形状が決まってしまうものであります(ご存じの通り放物面形状を有します)。実は、意匠法では、必然的に定まる形状(必然的形状)については、保護対象外としています(意匠法5条3号)。必然的形状についてまで意匠法で保護することとすると、経済活動を不当に制限してしまうおそれがあるためです。
 他にも必然的形状に該当するものはありそうです。ぜひ考えてみてください。


日本弁理士会東海支部 知的財産権制度推進委員会
委員 弁理士 岩田 誠