このように十分には利用されていない特許発明の活用を促し、新規な事業を創出することを目的として、特許庁は平成9年度から「特許流通促進事業」を開始し、現在では独立行政法人工業所有権情報・研修館が事業を引き継いでいます。この事業では種々の公的支援サービスを提供していますが、意外と知られていないのが現状です。ここでは、そのいくつかをご紹介します。
(1)特許流通データベース(http://www.ryutu.inpit.go.jp/PDDB/Service/PDDBService)
他人に実施許諾・権利譲渡してもよい特許(開放特許)に関する情報を、誰でも無料で登録することができるデータベースです。そして、登録された情報は、インターネットを介して誰でも自由に検索・閲覧することができます。開放特許を利用したい場合は、画面ボタンのクリックにより、商談希望の意思を登録者に伝えることができます。情報の登録は、申請により登録者IDを取得してから行います。登録件数は本年8月現在で4万8千件余ですが、大学・TLO・個人など、自ら実施手段を持たない権利者による登録が約4割を占めています。
(2)特許流通アドバイザー
特許流通を専門に行う人材として、全国に派遣されています。中部地方では、愛知県産業技術研究所、岐阜県研究開発財団、三重県科学技術振興センター、発明協会静岡県支部などに派遣されています。特許流通に関する相談・啓蒙活動を行うほか、多数の企業を訪問してシーズとニーズとを聴取し、企業間での技術移転の橋渡しを行います。全国規模の特許流通アドバイザー間ネットワークを活かして、地理的に離れた企業間での成約例も多いと聞いています。また、地方自治体所属の特許流通アシスタントアドバイザーも、特許流通アドバイザーの指導を受けつつ一緒に活動しています。
(3)特許ビジネス市
上記の二つは自ら実施しない発明を他人に実施してもらうのが主目的でしたが、特許ビジネス市は自ら実施するための支援を受けることが主目的です。特許ビジネス市に応募して選出されると、金融機関・商社・ベンチャーキャピタル等の参加者の前で、特許を核としたビジネスプランについてプレゼンテーションする機会が得られ、事業提携、共同開発、販売協力、資金提供などの支援を募ることができます。本年度は、東京で2回、大阪で1回が予定されています。また、本事業の支援を受けて、地域版の特許ビジネス市も毎年各地で開催されています。
(4)特許流通の成功事例、優良シーズ紹介、特許流通シンポジウム等のイベントなど、特許流通に関する各種情報が、「特許流通ニュースメール」(月2回配信)、「特許流通ニューズレター」(年4回・発明協会発行)、本事業のインターネットサイトによって発信されています。
弁理士 大矢 正代