発明者が自ら為した発明について特許出願をしても、その発明について既に他人が特許出願をしているときは、その特許出願は特許庁の審査で拒絶されてしまいます。拒絶されてしまうと、発明者はその発明について特許権を取得することができませんし、特許出願に要した費用も無駄になってしまいます。したがって、自ら為した発明について特許出願するときは、事前に特許調査を行って、その発明が他人に先に特許出願されていないかを確認することが必要です。
また、事業者が新規事業を始めた場合、その事業に使用している技術が他人の特許権を侵害するようなことがあると、事業者は特許権者から事業の差し止めまたは損害賠償などを請求されてしまいます。したがって、新規事業を始めるときは、事前に特許調査を行って、その事業が他人の特許権を侵害していないかを確認することが必要です。
2.IPDLを利用した特許調査の仕方
特許調査は、既に公開された特許出願の内容が記載された特許文献(特許公報、公開特許公報等)の中からその発明または事業に関連するものを抽出し、抽出された特許文献を調べることにより行います。以下に、特許庁電子図書館(IPDL)を利用した特許調査の仕方について簡単にご紹介致します。
IPDLを利用した特許調査は、インターネット接続環境下のパソコンを使って、以下の手順に従って行うことができます。
①~⑨の手順にしたがって、抽出した特許文献の内容を確認することで、自ら為した発明について他人が既に特許出願していないか、または新規事業が他人の特許を使っていないかについて調査を行うことができます。なお、図の手順④の検索項目選択欄には、「要約」、「要約+請求の範囲」以外の他の項目を選択することもできます。さらに、検索項目を掛け合わせて検索することもできます。
3.特許調査をうまく行うためには
特許調査をうまく行うためには、図の手順⑤で入力する検索キーワードの選択が重要となります。非常に大きな概念を表す用語をキーワードとして入力して検索した場合は検索ヒット件数が膨大になり、ヒットした特許文献の中に発明と関連性の薄い公報(ノイズ)も多く含まれてきます。これでは効率的に特許調査を行うことはできません。
一方、非常に小さな概念を表す用語をキーワードとして入力して検索した場合は、検索ヒット件数は少なくなるものの、発明と関連の深いものがヒットしない可能性があります。これでは有効な特許調査を行うことができません。したがって、ノイズをできるだけ減らし、且つ発明と深く関連するものが確実にヒットするように、適切なキーワードを設定することが重要となります。適切なキーワードを設定することができれば、漏れのない特許調査を短時間で行うことができます。

弁理士 金井 憲志