東海会の活動について

新聞掲載記事

更新:2007/11/04

東海の小中学校で「知財教育」を支援

1.教育機関支援機構の活動

 東海支部では、教育機関支援機構を設けて、小・中・高校の実施する知的財産に関する教育の支援を行っております。創造力豊かな人材の育成や知的財産を尊重する精神の涵養を目的として、科学することの楽しさと共に知的財産の創造と尊重の大切さを教えています。
 また、大学は知的財産の創造の源泉ですので、大学では、大学で生まれる知的財産を、如何に、適格に保護して行くべきかの戦略を含んだ知的財産制度の活用に関する研修を、教職員、学生に対して行っております。これらの活動は、東海支部の社会貢献活動として、社会から高い評価を頂いております。

2.小学生対象の知的財産授業

 本支援機構が行う活動のうち、小学生に対する知的財産授業について、紹介します。
・創作性の発揮
 碧南市ものづくりセンターと共催で、科学に興味のある子供達を募って、知的財産授業と、科学工作及び実験授業を行いました。最初は、身近で具体的な生活用品の発明品を例に、従来の生活用品をどのように改良すると、生活に便利なものとなるかを、生徒にいっしょに考えさせ、色々なアイデアーを出させることを行いました。そして、発明は、身近に存在し、生活を豊かにするものであることを、体感してもらうようにしました。

・知的財産の尊重の精神
 次に、このように人が苦労して創作した発明品や、それを社会に提供した発明者が尊重されるべきことと、その発明品の模倣がどのように防止されているかを分かり易く解説しました。動物を登場人物とした童話風カラー劇画をスライドにして上演しました。
 登場人物の声優は、我々4~5名の弁理士が努めます。東海支部では、これを電子紙芝居と言っています。主人公の犬のレオ君が一生懸命、努力してやっと完成した独創性あるいちごジャムパンを製造販売して、村人に好評であったところ、その製造方法をこっそりと見ていたきつねのシンが真似をして、そのパンを低価格で販売したために、レオ君のパンが売れなくなったと言うのが、物語の始まりです。
 この後、レオ君は、弁理士のサルのキヨじいさんに相談し、色々と失敗があったものの、特許になる条件を色々と学び、また、大変な努力をして、食感の良いカレーパンを、特許を取得して、製造販売するというものです。これも、シンに同様に模倣されるのですが、今度は、特許権があるので…、という話です。
 ここで、始めの場面で、シンが、真似をしたいちごジャムパンを安く販売した時に、それが安いという理由だけで村人達に好評となり、一生懸命努力して、やっと独創的な製品を完成させたレオ君が悲しむ場面があります。この場面に、生徒達は、レオ君の心境を思い、引き込まれます。生徒達は、最初のシンの模倣についても、正しくないのでは、との心証を抱いているはずです。独創的な生活を豊かにする知的創造物や、その発明者が尊重されるべきであるとの感覚は、このとき生徒の抱く感覚で正しいはずです。
 最後に、生徒が抱くこの尊重することの感覚を大切にしつつ、特許は、この知的財産の尊重をより確実に、円滑に推進する制度であり、文明の発達や資源小国の我が国にとって、必要な制度であることを理解させます。

・科学の不思議さの体験
 次に、科学工作とそれを用いた実験を行いました。科学工作は、子供達に科学授業をされ各種の実験品を工夫されている中部大学の岡島茂樹教授より、指導を受けたものです。科学工作は、青色発光ダイオードと抵抗とメロディICとから成る送信器と、ホトダイオードと抵抗と圧電素子から成る受信器とを製作して、音楽を光に乗せて空間伝搬させて、圧電素子から音楽を出力させるというものです。
 この工作の良いところは、先端科学技術を用いていながら構造が非常に簡単で、その簡単な構造を外から生徒が見ることができ、そのような簡単なもので音楽が空間を伝搬して圧電素子から出力されるという科学の不思議さを生徒が体感できる点にあります。生徒達は、苦労した初めてのハンダ付けの後、離れた所から音楽が出るという最後の結果の不思議さに満足したのではないでしょうか。
 その後、全員に、アルミホイールで鏡を作らせて、光反射による光伝送を実験させ、光の直進性と入射角と反射角の関係を学習させました。
 最後に、長さ20mの屈曲した外から見て透明な光ファイバーに、送信器の発光ダイオードから出力される青色の光を入射させて、光ファイバーの出力端に、受信器のホトダイオードを当てて、音楽を出力させるという実験を行いました。
 「先程の実験では、光は直進しかしませんが、光は、何故、曲がりくねったファイバーを伝搬するのでしょうか。」、「発光ダイオードから出る光は、青色に見えますが、光ファイバーを伝搬している光は、外から、何故、青い光として見えないのでしょうか。」という、問いをして、実験を終了しました。
 生徒が、将来、光の反射と屈折を学んだとき、この問いかけを思い出し、自らの力でその理由を解明することを夢見ながら授業を終えました。

3.おわりに

 東海支部では、小学生を対象に、このような出前授業を行っております。生徒が自分で考えるような授業にしたいと考えております。興味をお持ちの方が御座いましたら東海支部までお尋ね下さい。

日本弁理士会東海支部 教育機関支援機構機構長
弁理士 藤谷  修