特許庁で審査を受ける特許出願の多くは、特許法で定められた理由により、特許を受けることができない旨の通知を審査官から受けます。これが拒絶理由通知で、出願手続に対する特許庁の行政処分である拒絶査定に先立つものです。
拒絶理由通知を受けた出願人は、特許庁に対して一定の期間内に適切な手続をとらなければ特許を受けることができません。それには、まず拒絶理由通知の内容から、どのような理由で特許を受けられないのかを把握してその後の対応策を検討する必要があります。
拒絶理由は特許法49条各号に列挙されていますが、一般的なものとしては、例えば、29条1項3号、29条2項、36条6項、37条等があります。
以下、拒絶理由通知を受けた場合の措置と留意点を紹介します。
1.意見書の提出
意見書は、拒絶理由通知に対して出願人が意見を述べる書面です。拒絶理由に納得できない場合に提出しますが、手続補正書により補正した場合にも補正の適法性や拒絶理由を解消した旨を述べるために提出します。提出は、原則として拒絶理由通知で指定された期間(例えば60日)内に行う必要があります。
2.手続補正書の提出
手続補正書は、特許請求の範囲や明細書等の内容を補充や訂正する書面です。拒絶理由が29条1項3号<新規性>や29条2項<進歩性>を根拠にするものであれば、請求項に係る本願発明と引用文献に記載された引用発明とが相違するように、または引用発明に基づいて本願発明に容易に想到できないように、特許請求の範囲等の記載を補正します。
また36条6項<記載要件>であれば、特許請求の範囲等の記載を法定の要件を満たすように改める補正をします。これによりその後は補正後の内容で審査が行われます。但し、意見書と同様に時期的な制限や、新規事項の追加やシフト補正ができないことに注意しなければなりません。また拒絶理由通知が『最後の』拒絶理由通知である場合には、特許請求の範囲の補正が内容的に制限されるのでこれにも留意します。
3.分割出願
拒絶理由が37条<発明の単一性>を根拠にするものであれば、例えば、審査されなかった請求項に係る発明を抜き出して新たな特許出願(分割出願)をします。これにより、分割出願に係る発明は、もとの出願時に出願されたものとして審査がされます。ただし、時期的な制限や内容的な制限により分割できない場合もありますので注意が必要です。
4.出願変更
拒絶理由とは別に出願後の知財戦略の変更等により、実用新案権として短期間に権利化を望む場合や図面に表した装置等の形状をデザイン的に意匠権として保護したい場合には、実用新案登録出願や意匠登録出願に変更します。但し、いずれの場合も、もとの特許出願が自動的に取り下げになるため、本来権利化を望んでいた発明が特許を受けられなくなることに留意します。時期的な制限や内容的な制限により変更できない場合もあります。
5.国内優先権主張
先ほど紹介した手続補正書の提出では、新規事項の追加になるような内容を明細書等に補充したい場合には、拒絶理由を受けた出願を基礎(基礎出願)として国内優先権を主張してこのような内容を補充した出願を行います。但し、基礎出願から1年以内でなければできないことや、基礎出願が自動的に取り下げになること等に留意します。
6.放棄又は放置
拒絶理由通知を検討しても、以上のような措置をとることが難しい場合には、出願を放棄したり、何もせず放置する策もあります。これにより他の出願や新たなる発明の完成に注力できます。
なお、これらの措置は、いずれも一般的なものを簡単に紹介したにすぎませんから、各事案については個別具体的に詳細に検討する必要があります。
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新聞掲載記事
更新:2007/09/30
拒絶理由通知を受けた場合その措置と留意点
弁理士 澤田 高志