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新聞掲載記事

更新:2007/06/07

平成18年 特許法の改正

 今年の4月1日から、平成18年改正特許法が施行されました。これから特許出願しようとしている方、また現在出願をしておられる方にも関わってくる内容ですので、簡単にご説明します。改正の内容はおもに、補正の制限の強化と、分割出願ができる時期の緩和です。以下、特許法の条文の番号は「特17条の2」等と、特許法施行規則については「特施規25条の8」等と略記します。

1 補正の制限
(1)拒絶理由通知への応答時などの補正
 拒絶理由通知を受けたとき等の補正は「拒絶理由通知において特許できないものか否か判断が示された発明」と「補正後の特許請求の範囲の発明」とが「発明の単一性」を満たすものでなければなりません(特17条の2第4項)。この「発明の単一性」を満たす複数の発明というのは「同一の又は対応する特別な技術的特徴を有している」等の要件を満たす発明です(特37条、特施規25条の8第1項)。

 たとえば特許請求の範囲に「エンジンの発明」が記載されていた場合には、それを「タイヤの発明」に書き換えることはできません。エンジンとタイヤとでは、技術的特徴が同一でもなく対応もしていないからです。
 また、CDプレーヤの発明について補正しようとする際、補正の前と後のCDプレーヤがともに「CDを回転させるモータM」を持っていたとしても、そのモータMが出願時に知られた物である場合は、そのモータMは「技術的特徴」とはなりえません(特施規25条の8第2項)。
 一方、そのモータMが出願時には知られておらず、新しい効果を奏する物である場合には、モータMは「技術的特徴」となり得ます。よって「モータMと他の構成xとを備えるCDプレーヤA」を「モータMと他の構成y(≠x)とを備えるCDプレーヤB」に補正できます(図1参照)。

(2)分割出願の拒絶理由通知とその応答時の補正
 分割出願(特44条1項)を審査した結果、その出願が分割のもとになった出願等と同じ拒絶理由に該当する場合には、拒絶理由通知の際にその旨があわせて出願人に通知されます(特50条の2)。その通知がされた場合、拒絶理由通知を受けたとき等の補正については目的の制限が課せられます(特17条の2第5項)。
 たとえば、発明の範囲の減縮を目的とする補正であること(同2号)等の制限です。このため、分割出願においては、もとの出願等で指摘された拒絶理由に該当しないような発明を特許請求の範囲に記載するよう注意が必要です。

2 分割出願時期の緩和
 これまで分割出願は「明細書等について補正ができる期間内」にできました。今後の出願ではさらに、特許査定や拒絶査定の謄本の送達があったときにもすることができます(特44条1項2号、3号)。

3 その他
 以上で説明した事項以外に、外国語書面出願の翻訳文提出期間についても改正されています(特36条の2など)。詳しくは、弁理士までお問い合わせ下さい。また、特許庁や電子政府の下記HPもご参照下さい。「産業財産権法(工業所有権法)の解説」「特許・実用新案審査基準」「法令データ提供システム」


弁理士 堀 研一