東海会の活動について

新聞掲載記事

更新:2006/07/05

改正による権利保護・模倣品対策の強化

 「意匠法等の一部を改正する法律案」が今年6月1日に可決・成立し、6月7日に法律第五十五号として公布されました。この改正の目的は、「権利保護の強化」と「模倣品対策の強化」です。以下、今回の改正の一部をご紹介します。

(1)デザインの保護(意匠法)
 1)意匠権の存続期間の延長
 意匠権の存続期間について、改正前は、意匠登録の日から「15年」ですが、改正後は、意匠登録の日から「20年」に延長されます。優れたデザインのロングライフ商品など、魅力があるデザインを長期間にわたり保護するためです。

 2)画面デザインの保護の拡充
 画面デザインについて、改正前は、例えば携帯電話の「初期画面」のみが保護対象でしたが、改正後は、例えば通話者選択画面、デジタルカメラの設定画面(左図参照)など、物品がその本来的な機能を発揮できる状態にする際に必要とされる「操作に使用される画面デザイン」も保護対象となります。なお、このような画面デザインであれば、例えばテレビ画面に表示されるビデオ録画再生機の操作画面など、「同時に使用される別の物品の表示部に表示されるもの」であっても構いません(下図参照)。


(2)発明の保護(特許法)
 1)分割の時期的制限の緩和
 特許法には、一つの出願に複数の発明が含まれる場合に、一部の発明を切り離して新たな出願とする分割出願制度がありますが、この分割できる時期について、改正前は、審査終了(特許・拒絶査定)前の所定期間だけでしたが、改正後は、これに加えて、特許・拒絶査定の謄本送達後三十日間でも分割できます。
 但し、特許査定後においては設定登録前に限られます。これにより、特許査定時の請求の範囲が十分実効的なものでない場合や、請求の範囲に発明を的確に表現できずに拒絶査定となった場合に、出願を分割して適切な特許請求の範囲で再度権利取得を目指すことができます。

 2)分割出願の補正制限(分割出願制度の濫用防止)
 分割前の元の出願等に通知された拒絶理由が解消されていない分割出願(例えば元の出願で既に進歩性が否定された発明と同じ発明が請求の範囲に含まれている分割出願)には、その分割出願に対して一回目の拒絶理由の通知であっても、現行における最後の拒絶理由通知が通知された場合と同じ補正制限(請求項の削除・請求の範囲の限定的減縮・誤記の訂正・明瞭でない記載の釈明、のいずれかを目的とする補正に限る)が課されます(下図参照)。


 3)別発明に変更する補正の禁止 
 改正前は、拒絶理由通知を受けた後に、請求の範囲を「技術的特徴の異なる別発明に変更」するで、実質的に複数件分の審査を受けることが可能でしたが、改正後は、拒絶理由通知を受けた後に請求の範囲に記載された発明を技術的特徴の異なる別発明に変更する補正が禁止されます。具体的には、下図の類型1のように、当初、請求の範囲に発明Aが記載され、その発明Aについて進歩性なしの拒絶理由が通知されたとします。
 この場合、たとえ発明Bが明細書中に記載されていても、発明Aと技術的特徴が異なる(発明Aと発明Bとが発明の単一性の要件を満たさない)ときには、発明Bを請求の範囲に追加する補正はできません。
 また、類型2のように、当初、技術的特徴が異なる別発明である発明A,Bが請求の範囲に記載され、審査において発明の単一性の要件を満たさないとされ、発明Aのみが進歩性等の審査対象とされて進歩性なしの拒絶理由が通知されたときに、請求の範囲について発明Aを削除し、発明Bのみを残す補正はできません。
 このような類型の補正を許すことは結局、一つの出願について二件分の審査を受けることとなり、審査を受ける前に取得しようとする権利を精査し絞り込んでいる出願人との間に不公平が生じるという理由です。


 なお、今回の改正説明会が、特許庁主催で、名古屋商工会議所にて7月18日に開催されます。詳しくは、特許庁のホームページをご覧ください。

弁理士 村上 二郎