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新聞掲載記事

更新:2006/03/05

特許を取得するための料金を軽減する制度があることをご存知でしょうか?

 特許権の取得には、出願時の「出願料」、審査を受けるための「出願審査請求料」、審査が通ったときの「特許料」等を特許庁に納付しなくてはなりません。これらの料金負担は、特に個人事業主や中小企業にとって決して軽いものではありません。
 そこで、特許法は古くより特例措置として、資力の乏しい個人については「出願審査請求料」と「特許料(第1~3年分)」を軽減又は免除する制度を設けています(特許法109条、195条の2)。
また、平成11年の特許法改正では、その特例措置を資力の乏しい法人にまで拡充しました。

 さらには、平成12年に産業技術力強化法が施行され、資力の大小にかかわらず「研究開発型中小企業」のする出願については、「出願審査請求料」と「特許料(第1~3年分)」を半額に軽減する制度がはじまりました。それからすでに6年近くが経過し、この制度により相当の恩恵を受けておられる中小企業もございます。
 ところが、実際この制度をご存知の方は少ないようです。また、ご存知の方でも、軽減を受けるための申請手続きがよく分からないことから、あまり利用されていないようです。

 しかし、周知の通り、平成15年の特許法改正により、平成16年4月1日以降の出願について、特許料は減額された一方、出願審査請求料は増額されました。例えば請求項数が3つの場合、出願審査請求料は180,600円です。もし半額の軽減を受けられるならば、90,300円が軽減されます。特に、毎年何件もの出願をされている企業には、かなりの負担軽減となりますし、その軽減分をさらに研究開発にお使いいただくこともできます。

 そこで、今回はこの軽減制度を該当する皆様に活用していただけるよう、研究開発型中小企業の場合の申請手続きの一例を、Q&A形式でご案内させていただきます。
 なお、軽減(又は免除)制度の対象は様々であり、その対象によって軽減措置の内容も、申請に必要な書類、記載内容も異なります。詳細は、特許庁ホームページに掲載されていますので、ご確認下さいますようお願い申し上げます。また、同ホームページには、料金減免の対象であるかどうかを簡易に判定できる「料金減免判定ページ」が新たに設けられています。また、ご質問等ございましたら、日本弁理士会 東海支部(電話052-211-3110)にお問い合わせ下さい。


弁理士 松原 等


Q1
我が社は、毎年5~10件の特許出願をしていますが、費用負担が大変です。このたび減免制度があることを知人から聞いたのですが、どのような法人や個人が減免制度を受けられるのでしょうか?

A1
(1)国、(2)国立大学法人、(3)国立大学認定TLO、(4)国立大学法人承認TLO、(5)大学等承認TLO、(6)試験研究型独立行政法人認定TLO、(7)国立試験研究機関TLO、(8)独立行政法人、(9)資力に乏しい個人、(10)資力に乏しい法人、(11)アカデミック・ディスカウント、(12)研究開発型中小企業、(13)公設試験研究機関等です。

Q2
(10)の資力に乏しい法人とは、どのような程度をいうのでしょうか?

A2
法人税が課されておらず、設立から10年経過していないこと等が要件となります。詳しくは特許庁ホームページでご確認下さい。

Q3
我が社は、幸か不幸か(10)には該当しません。他で可能性がありそうなのは、(12)研究開発型中小企業ですが、これはどのようなものでしょうか?

A3
研究開発型中小企業とは、以下の1~3の要件を満たす個人事業主・会社及び協同組合等をいいます。
1 出願した発明が職務発明であり、発明者はその発明を事前に定められた契約や勤務規則等に基づき使用者(会社等)に譲渡していること。
2 従業員数、又は資本・出資の総額が、下記表の中小企業である要件を満たすこと。
3 a)出願人(会社等)の試験研究費等の比率が収入金額の3%を超える。
 b)または、中小企業新事業活動促進法に基づく認定事業(4種あります)に関連した出願であること。






a 製造業、建設業、運輸業
その他の業種(b~eを除く)の場合
300人以下
b 小売業の場合 50人以下
c 卸売業又はサービス業の場合
(ソフトウェア業、情報処理サービス業及び旅館業を除く)
100人以下
d 旅館業の場合 200人以下
e ゴム製品製造業の場合
(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)
900人以下
又は









a 製造業、建設業、運輸業
その他の業種(b及びcを除く)の場合
3億円以下
b 小売業又はサービス業の場合
(ソフトウェア業及び情報処理サービス業を除く)
5千万円以下
c 卸売業の場合 1億円以下


Q4
我が社は、まず1は満たします。2は「製造業 従業員数50人」なので満たします。3は試験研究費を結構投じていますので、a)の方を満たすと思います。そうすると、減免制度を受けられますね!!

A4
はい、その通りです。よかったですね。但し免除は無理で、半額軽減となります

Q5
半額でも助かります!でも、難しい手続きが必要なんでしょうね?

A5
そんなことはありませんよ。
それでは、貴社のような研究開発型中小企業の場合の「出願審査請求料の軽減申請」を例にとって、手続きのステップと必要書類をお教えしましょう。



ステップ1:まず、次の書類(1)~(7)を準備します。
(1)審査請求料軽減申請書
(2)資本の額又は出資の総額を証する書面
(3)日本標準産業分類に基づく業種を証する書面
(4)試験研究費等比率を証する書面
(5)職務発明認定書
(6)就業規則の写し
(7)確認項目
(1)(5)(7)は、特許庁HPに記載の[様式見本]に従って作成して下さい。
(2)は、登記簿謄本や、履歴事項全部証明書等です。
(3)は、貴社の会社概要が記されたパンフレット等で結構です。
(4)は、3%超を証明する前年の財務諸表、損益計算書の写し等です。

ステップ2:準備した申請書類は、各地域の経済産業局(例えば中部の場合、中部経済産業局)に送付します

ステップ3:経済産業局は、各要件を満たすことを確認して「確認書番号」が記載された「確認書」を交付します

ステップ4:出願審査請求書に、この確認書番号を記載し、出願審査請求料の「半額」を納付します。つまり、これで軽減(半減)したわけですね。

Q6
よく分かりました。なんとかできそうですね!! 複数の出願について軽減申請したい場合は、まとめて1回申請すればよいのでしょうか?

A6
残念ながら、複数の出願をまとめて1回で行うことはできません。
この軽減申請は、1出願ごとに行わなければなりません。

Q7
1出願ごとにですか? 大変ですね。
ということは1回毎に書類(1)~(7)を揃えなければならないのですか?

A7
いえ、初回の申請で提出した書類のうち、(2)(3)(6)は、次回の申請で、変更が無い限り最高3年間、援用(コピーを付ける)できます。(4)は同じ事業年度中及びその事業年度の2ヶ月後まで援用できます。

それを聞いて、ほっとしました。
我が社は出願件数も多いので、是非この減免制度を利用し、減額された分を研究開発費に回して、ますます研究に力を入れたいと思います!!