日本弁理士会東海支部には、教育機関支援機構という知財教育を支援するための組織がある。堅苦しくいえば、「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」(知的財産戦略本部)を受けて、東海地域所在の小学校・中学校・高等学校及び大学等の教育機関を支援するための組織である。創立満二年。十数名の運営委員のほか、二百名近い支援員により成り立っている。一般講義のほかに、様々な体験型の出前授業を行っている。これらの支援活動を通して、将来を担う子どもたちの、知的財産に対する興味を刺激できればと願っている。
資源の乏しいわが国が標榜すべきキーワードとして、「技術創造立国」があり、これをサポートするものとしての「知的財産立国」がある。これらの理念を背景として、小学校から大学までの各段階で、自由な発想、創意工夫の大切さを養う教育、発展段階に応じた知財制度理解のための教育の重要性が喧伝されている。一方、小さな政府を標榜するこれからの時代にあって、いわゆる知財教育を国のみが行うには限界がある。弁理士会は、専権を付与された資格組織として、これらの教育支援の一翼を担うべきであると自覚している。
2.本年度は大学関係では4大学6回のセミナー、高校は7校10授業、小学校は7校16授業であった。
全体としては、32回のセミナー・授業を行った。
小学校及び高校の出前授業について紹介してみたい。
【小学校の主な授業態様】
下の写真は「君も今日からエジソン」と題した名古屋市立宮根小学校での授業風景(平成17年7月13日(水))。導入でチャッピー君(ばねが内蔵された小形のぬいぐるみ)を用いて、その作動をもたらすばねの仕組みを理解させた。皿とカップを見せて、その利点を組み合わせた考案について提案させた。さらには、「発明家が特許権を持っているとどのように守られるか」を、パワーポイントを使って紙芝居風に説明した。児童の反応は大変よく、活発であった。発明保護の話も意外にも熱心に聴いており、「真似はいけない」「発明家が守られてよかった」との意識をしっかり持っていることを嬉しく感じた。
<宮根小学校での授業風景(右上写真)>
小学校の授業では、感想文が授業後に届くの通例であり、講師の励みになっている。
その一通を紹介してみたい。
「今日はたくさんおもしろいことを教えてくださってありがとうございました。バネでかみなりの音を出したり、マジックミラーなどとても楽しかったです。郷土の発明者のこともわかってよかったです。6年間で初めてのことだったので良い思いでとなりました。」(香具山小6年真山なつみ)、
このような出前授業は、豊橋市立大村小、一宮市立大和東小、瀬戸市立品野台小、春日井市立八幡小などの愛知県内だけではなく、静岡市立清水高部小などでも行っており、静岡県、長野県へのひろがりをみせている。
<静岡市立清水高部小での授業風景(左下写真)>
【高校の主な授業態様】
高校の授業は、制度理解に充填を置くもので、いわゆる講義形式となる。しかし、知的財産権制度は高校生にとって、馴染みがあるものでもないので、学校の要望を取り入れながら、各講師が工夫を凝らすこととなる。例えば、知的財産権を"コンニャクお化け"に喩えて説明。コンニャクお化けのイラストの著作権は誰に属するか。この行為は著作権の侵害に該当するか。2つの文字列や絵柄は類似するか。この文章はどのように解釈されるか。など、生徒に考えさせつつ、講義を行っている。
<愛知商業高等学校での授業風景(右下写真)>
教育機関支援機構では、学校現場の声に耳を澄ませながら、独りよがりにはならない支援活動、息の長い活動を行っていきたいと考えている。学校関係者からの様々なご要望をお待ちしている。
平成17年度東海支部教育支援機構長
弁理士 松浦 喜多男
弁理士 松浦 喜多男